今回は若山牧水の名随筆。雨がしとしと降るような、家の縁側で雨の音を聞きながら物思いにふける中に、かつて牧水が読んだ歌が散りばめられている。この句がなかなかにおいしい、というか読書をしていておいしいところに行きあたるものを読書会でチョイスされているのがありがたい。
個人的には以下の句が気に入った。
「雨けぶる浦をはるけみひとつゆくこれの小舟に寄る浪聞ゆ」
雨けぶる浦、とは、水場にさらに雨が降り、やや景色がぼんやりと見えるさまが目に浮かぶようだった。さらに雨の音の中に波の音まで聞こえる。白く浮かぶ風景に、聴覚も刺激されるような句だと思った。
自分も雨の日は物思いにふけることが多いが、筆者は雨を好むという。あらゆる景色に風情を感じられてこその、歌人というやつだろうか。
ところで最後の方に書いてあった室内のデスクが嫌になって廊下にわざわざ小さな机を持ち出すというのがちょっと面白い。それ、学校で教室から追い出された時にうける罰では…(笑)と、ちょっと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文アル読書会
- 感想投稿日 : 2017年6月22日
- 読了日 : 2017年6月15日
- 本棚登録日 : 2017年6月22日
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