緋のエチュード

  • 青空文庫 (2013年2月2日発売)
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感想 : 3

アーサー・コナン・ドイルのかの有名なシャーロックホームズシリーズである。海外の人はやはり殆ど読んだことがなかったので、訳文に慣れるか心配だったが、するする入ってとても楽しめた。やはり一度読みやすいと思った訳者の訳は良い。
内容は、かつてアフガン戦争を経験した医者であるワトソンが、犯罪化学に特化した能力をもつ探偵シャーロック・ホームズと同居することになり、彼の依頼人であるスコットヤード警察のレストレード、グレグソンから殺人事件に手を貸すように言われて捜査に乗り出すもの。今回は、恋人とその義父を苦しめたモルモン教徒のドレッパーとスタンガスンを、何十年にも渡って復讐せんとした犯人の、執拗な、それでいて悲しい理由に裏打ちされた話だった。
私はシャーロックホームズシリーズに触れるのは今回が初めてだったがまず、ホームズがあまりにキテレツな人物だったのに驚いた。第一印象は、犯罪捜査のためなら人も殺しかねないという本末転倒になりそうな危ねえ奴である。採血痕が腕に残ってるというだけでも大変結構、そして現場のどんな細かい証拠も一瞬で記憶して捜査の物証にするという。その思考プロセスが早すぎて読者はおろか登場人物にも何の説明もなしにいきなり犯人を捕まえるのだから驚く。説明を、説明をしてくれ、ホームズ、という気分が半分くらいまで続く。
そして半分まできて犯人がわかったと思ったら今度は犯人視点の犯罪に至るまでの過去が次々と小説になって現れてくるのだ。解決まで一気読みせざるをえない構成にどんどん引き込まれてしまった。結局、ホームズがなぜ犯人を特定できたのかは、最終章になってようやく分かるという鬼畜極まる構成だったのだが、その山や谷が非常にテンポがいいのだ。これはおそらく短い方なのだろうが、長いものになったら一体どんな風になってしまうのか...アーサー・コナン・ドイルの筆遣い恐るべしである、さすが文豪。要するに大衆小説としてクソ面白い。作者よりも頭のいい登場人物は書けるのか、という話題を昔見かけたが、シャーロックホームズの知識はおそらくドイル本人が培ったものを再構成してるのだろうと思わせてくるのがなかなか楽しかった。
それにしても、宗教ありきの国でもモルモン教の下りは宗教が怖いと思わせるところがあったし、そういう感情は万民共通なのだろうと思った。ジェファーソン・ホープは可哀想。

余談だがシャーロックも少年探偵団を使って捜査をするらしい。このへんはやっぱり名探偵コナンの元ネタだったりするのかな?(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月7日
読了日 : 2019年8月6日
本棚登録日 : 2019年8月6日

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