海嶺(下) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2012年8月25日発売)
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感想 : 9
4

ゼネラル・パーマー号でロンドンからマカオに到着した音吉、久吉、岩吉(岩松のこと。験をかつぎ途中で呼び名を「岩吉」と変えた)。
三人はそこで聖書の和訳の協力を依頼される。
この事がお上に知れたら・・・と恐れつつも、世話になっている故に断れず協力する三人。
その中で、聖書の中に書かれているイエス・キリストの言葉に惹かれてゆくようになる。
人間は誰も同じであるから、人を奴隷として使うのはおかしい。
人間である限り、誰もが罪人である。

マカオに到着して1年以上経過した頃、嵐に巻き込まれた日本人4人がマカオに送り届けられる。
自分たちと同じ境遇の、久々の日本人との再会に涙を流し感激する7人。
その後、7人は紆余曲折ありながら日本に送り返されることとなる。
夢にまで見た日本を目の前にし、喜ぶ7人だったが-。

あまりにむごい・・・!
こんな事、あってええん?
思いが高まって涙がこぼれた。
その感情が絶頂にきたところでプツンとこの話は終わってしまう。
「えっ!?ここで?」
と唖然としてしまった。
そして、その後、創作後記として、7人の日本人のその後が簡単にそれぞれ書かれている。
しかし、日本にいた彼らの家族はどうなったのかという事には一切触れられていない。

物語には幕府との橋渡し役として優しい役人が一人出てくるが、大体の役人は非情で不親切だったのではないかと思う。
折も折、三人がようやく日本に到着した時は天保の大飢饉の折で、鎖国政策を強化していた。
しかし、人情があれば同胞にあんな仕打ちはできないだろう。
この本を読んでいる内に、
大切な人を故郷に残したままで自分の安否も告げられないもどかしさ。
そのまま何年も異国にいる主人公たちの思いがひしひしと伝わってきて、それがそのままラストに涙になって放出された。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 三浦綾子
感想投稿日 : 2013年7月9日
読了日 : 2012年9月4日
本棚登録日 : 2013年7月9日

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