
「ウェイクフィールド」
ウェイクフィールドという、20年間も突如家族の前から姿を消した男の物語。
彼は20年間も何処にいたのか-実は我が家と隣り合わせの通りにいて、いつも自分の居るべき場所を見て帰る機をはかっていたのだった。
「人面の大岩」
アーネストは子供の頃、母親から聞いた『将来いずれの日にか、この近在に生まれた子のなかから、この世で最も高貴な人物が誕生し、その子は聖人すると人面の大岩生き写しの顔になるというのである。』という言い伝えを信じ、毎日何時間も人面の大岩を眺めるようになる。
やがて、人面の大岩に似た人物が次々と現れる。
大金持ちの商人、名声の誉れ高い軍人、著名な政治家、詩人-。
人々は彼らが人面の大岩に瓜二つだと言うが、アーネストは言う。
「似ているところなんかちっともありはしないよ」
「地球の大燔祭」
昔ある時、人類は世界中のがらくたを地球の中心で燃やすことにした。
焚火の中には、それまで人類が培ってきたあらゆる物が投げ込まれていく。
「ヒギンボタム氏の災難」
煙草の行商をしているひとりの若者がある日、一人の旅人にこんな話を聞いた。
「キンバルトンでヒギンボタムというじいさんが、ゆうべの八時に自分とこの果樹園でアイルランド人と黒ン坊に殺されたよ」
しかし、その後会った人々に話を聞くと、その時間に老人が殺されたというのはどうもおかしいと分かる。
さらには当の本人は生きているという話さえ出てくるが-。
一人の老人が殺されたという噂話がどんどん一人歩きして、人々を巻き込み、膨らんでいく。
「牧師の黒いベール」
若い頃に親友を殺し、その日から死ぬまで黒いベールで人々の眼から顔を隠したフーバー牧師の話。
どれも現実離れした設定が印象的な話。
そして、その現実離れした、おかしいと思う部分こそが作者の言いたいこと、話のテーマだと思った。
そこにどうしても焦点がいき、だからその事について何となく考えざるを得ない。
最初の話なら20年間も姿を消し、しかも我が家の近くに住むなどという手の込んだ事をするのはどういう心理からだろう?どういう意味があるのだろう?と考えるし、次の話では毎日、人面の大岩をアホみたいに飽きもせず眺めるなんて・・・と思う。
読解力も思考力もない頭で私なりにそれぞれの話について色々感じ、考えました。
中々興味深い本だと思います。
- レビュー投稿日
- 2013年7月5日
- 読了日
- 2013年3月21日
- 本棚登録日
- 2013年7月5日
『人面の大岩 (バベルの図書館 3)』のレビューへのコメント
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