王妃の帰還

著者 :
  • 実業之日本社 (2013年1月19日発売)
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主人公は14歳の女の子、範子。
彼女のクラスは幾つかのグループに分かれていて、その中で最も低いと位置されているグループに範子は属している。
でもグループの仲は良く、ちょっとした緊張感をもちつつも学校生活を楽しんでいる。

そんな彼女のグループにクラスの頂点に立つ王妃・・・と勝手に範子が呼んでいる少女が入る事になった。
事の発端は彼女が自分の好きな教師にちょっかいを出しているクラスメートを陥れようとしてそれを目撃され、さらにはホームルームでやり玉にあげられたから。
その場面を範子はマリーアントワネットの斬首刑-ギロチンの場面と重ねている。

そんな訳で頂点グループから一気に大転落した王妃は範子のグループに入る事となったのだが、彼女はものすごくワガママで思った事をすぐに口にするし、感情が激すると泣いてしまうような女の子で、彼女が入った事でそれまで仲良かったグループの調和が乱れていく。
これは早く王妃に元のグループに戻ってもらわねば・・・という事で範子の王妃帰還作戦が始まった。

これを読んでホッとした事がいくつか。
この表紙とちょっとした内容である程度、この本の内容は掴めていただけに、もしやバカバカしいほどひどいイジメの描写があるのでは?と思ったり、今時の若者言葉連発の薄っぺらい会話が盛りだくさんなのでは?と不安を感じていました。
・・・が、それは全てクリア。
さらにものすごくホッとできたのは出てくる登場人物が皆今風の名前でなく、主人公の範子って名前にしてもそうだけど、普通だという事。
これを見て、「あ、これなら読めるかも・・・」と思いました。

これを読んで思ったのは、自分と趣味とか価値観の合っている人、一緒にいて疲れない人で仲良くしたり、グループになったり、そんなのって子供だけでなく大人になってもある事だし、そういう単位で行動するようになったら自然と他のグループの子たちとはそれほど親しくならなくなるって事。
このお話の範子も、王妃が転落するような事がなければ、同じクラスにいてもお互いに口をきく事もなかったんだろうと思う。
でも、たまたまだけど一緒の時を過ごすようになった事で、それまでは知らなかったお互いの価値観だとか考えを知って触発されて変わっていく。
変化って、やっぱりそれまでと違う事の中から生まれるんだよな~と思う。
まるで化学変化のように。
だけど反対に、ホントどっぷりと自分と合う子たちだけでいられるなんてのは学生の醍醐味かもな~とも思う。
大人になったら嫌でも年代も価値観も違う人と接点をもたなきゃいられないから。

ここに出てくる王妃と呼ばれる少女って、私が最初思っていたほどカリスマ性がある少女じゃなかった。
もっと凛としたタイプかと思っていたら、ワガママだし、すぐに泣くしで、どこにでもいそう。
でも顔がメッチャ可愛いという設定で、性格も裏表がないのには好感がもてた。
やはり人に傅かれる要素はあると感じた。

王妃の事を普段から憧れの目で見ていて、だけどそんな王妃が実際に自分のグループに入るとやりにくくてしょうがない。
それでいてやっぱり人が憧れる要素をもっている王妃といると誇らしく感じたり、嬉しく感じたりしてしまう。
それまでの友情をおざなりにしても・・・。
その辺りの微妙な少女の心情が伝わってきていいと思いました。
私のようなバアさんでも読めるくらいだから同年代の子や20代くらいの女性だったら楽しく読めると思います。
読後感もいいし、何となく可愛さを感じる本です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年7月3日
読了日 : 2013年5月29日
本棚登録日 : 2013年7月3日

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