昭和の時代、天才と呼ばれた京都の帯屋「若松華謡(単行本では松谷鏡水)」の話。一人娘とその夫のそれぞれの一人称で語られる。読みやすい文章で内容も歌舞伎界のスキャンダルなどが実名で描かれ、一族の歴史そのものも大変興味深いので一気に読めるのだが…。細雪ほどの文学性には欠けるし、クロニクルとしては客観性や資料的に不十分で何とも中途半端な感じ。若松華謡本人にとても興味を持っていたので期待していたのだが、資料の詰めの甘さを一人称で語ることで誤魔化してるような気がして残念。天才デザイナー、稀代の商売人、東条英機の私設秘書として暗躍する男、甘い父親、大勢の面倒をみるタニマチ、様々な顔を持つ複雑な人間のほんの上っ面しか描けてない。本人を知る人も現存しているだろうに、他の人から見た視点が全くなく、家族から見た一面しかないのが不満。連載時には全て実名だったからそれなりの覚悟で書き始めたはずなのに、その割には…。2014.12
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- 感想投稿日 : 2014年12月26日
- 読了日 : 2014年12月26日
- 本棚登録日 : 2014年12月26日
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