ジャズバー経営の経歴をもつ村上春樹さんだが、クラシック音楽の視聴歴もそれに劣らないくらい長く、かつ深い。
小澤征爾さんが病気療養を余儀なくされた期間中、様々なレコード演奏を聞きながら、小澤さんが師事したカラヤン、バーンスタインがどうやってテンポの取り方やオーケストレーションを作っていったのかマエストロの口から語られる。プロならば当然の常識だろうけれど、一般の音楽ファンにとっては新鮮な知見が披露され興趣はつきない。
聴き手である村上さんのクラシック音楽への理解の深さがなせるわざか、小澤さんへの質問が絶妙で、お二人のやり取りを追っているうちに、こちらも一緒に現場で音楽を聴いているような感覚につつまれる。
まさに奇跡のインタビュー。
白眉は、本書終盤に出てくる、小澤さん主宰のスイスでの若手演奏家に対する弦楽四重奏のトレーニング。
最初はバラバラだった4つの音が、互いの音をきき、プロからの細かなアドバイスを受けながら、全体として人を感動させる「音楽」に仕上がっていく。
クラシック音楽を聴く喜びを堪能できる一冊に仕上がった。
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- 感想投稿日 : 2018年6月7日
- 読了日 : 2018年6月7日
- 本棚登録日 : 2018年6月7日
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