三田祭論文の参考になるかなあと軽い気持ちで読み始めた本書でしたが、内容が思ったよりもまともだったので、論文のことなど何処へやら、いつのまにか一読者として楽しんでいました。
なぜ「内容が思ったよりもまとも」ということをわざわざ明記したのかと言いますと、俺が「ブランド」という語そのものに対してちょっとした嫌悪感を抱いている部分があったからでありました。
いわゆる「ブランド」という語には金持ちが○○の一つ覚えみたいに何も考えずに「ただ周りが持ってるから買ってる」っていうイメージが付きまとったり(なんて保守的な考え!)、また、ただ顕示したいがために買ってるんだろう・・とか、「ブランド」で売れるんだったら企業も苦労ないよなあとか、なんかそんなネガティブなイメージです。
まあ、僕も今たまたまグッチの財布使ってるんですが・・笑
だから、この本だって、もし「こうすればブランド戦略はうまくいくっす!」とかあるいは「グッチっていいよね~はあと」みたいな(失礼ながら僕からすれば)アレみたいなことばっかり書いてあったら、もうその時点で読むのやめよう・・と思ってました。
でもそんな本ではありませんでした。
本書の特徴としては、「ブランド価値の定義は、したがって、無限の循環となる自己言及のプロセスとなりそうだ」(p99)といった文章からもわかるように、ブランドそのものを記号論などの、経営学の範囲を超えた、学際的な視点から捉えている点が挙げられます(当たり前っちゃあ当たり前なのかもしれませんが)。
もちろん経営の視点もはずしていません。
全体として、身近な例を出しつつも、言いたいことはとても抽象的で学術的です。
まあ、でもそんなことよりも、何より著者の態度が終始一貫して誠実でかつクールだったところに好感を持ちました。
それは特に第5章の「ブランドの命がけの跳躍」に現れていると思います(5、6章は特に面白い)。
あと著者が妙なブランド信奉者じゃなくてよかったです。笑
ブランドってそもそも何なの?と普段から懐疑的に感じている人や、逆にブランドを無批判に受け入れている人など、多くの人がブランドを考える上で参考になる、とても良い本だと思いました。
(2007年09月11日)
- 感想投稿日 : 2010年8月2日
- 読了日 : 2010年8月2日
- 本棚登録日 : 2010年8月2日
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