死刑執行人の苦悩 (角川文庫)

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 死刑執行人実態ルポ。読むと死刑制度に対する観方が変わる。それ以前に、今の世の中死刑についてはそれほど考えない人が大半かもしれない。凶悪犯罪がクローズアップされ、そこに死刑廃止論者の弁護士が登場すると、それを「非難」するカタチで死刑制度について少しだけ考える。そして事件がメディアからフェードアウトするにつれてまた日常に戻っていく。本書に登場する死刑執行人の日常と自分の日常を比べてみることによって「死」というものを深く考えるきっかけとなる。

 法に従って他人の命を奪うことは、自らの意思によってそれを行うこととはまた違った苦悩がある。本書はこのような葛藤を持つ死刑執行人にスポットを当てているのだが、それに加えて死刑囚の振る舞いも貴重な描写として描かれている。執行当日声にならない叫びで必死に抵抗する様は非常に痛々しい。そして人間であれば「死」を宣告されたことによって何かしらの「変化」はあるはず。ちょっとした嫌がらせならばともかく「死」の宣告であれば「不貞腐れる」よりも「悟りを得た」とでもいうような変化が訪れてもおかしくはない。そしてそうした死刑囚を「殺す」ことを拒否できない執行官。

 かなり前に出版されたものなので、今では執行方法やその手続きも変わっていると思われる。手当の金額や直接の執行を行う方法などは今では現代に則したものとなっているだろう。しかし人が人を殺すという構図は今も昔も全く変わらない。ナイフで人を刺し殺すことも、核兵器で人を殺すことも行為の難易度の差はあれども、行為の結果としては等価値である。そして死刑の執行は刑務官、刑務所、もっと法務省そしてもっと広く公務員、そしてそうした人達およびその行動の正当性の契機となっている国民が行っている。我々はそれを正当化する理由はどうあれ「人を殺している」のである。

 著者も言及しているが、死刑制度の応報性が犯罪の抑止に繋がるというのならば、なぜ執行を公開しないのか。現場を映像で流すようなことは無理だとしても、死刑が執行されたこととそれによって命を絶たれた人の名前をメディアで大々的に流したらどうか。妄想となってしまうが、こうした死刑制度を存続させている理由は、犯罪の抑止ということよりも、一部の人間にとって邪魔な人物を消す手段を「万が一のために」確保しておくことではないのかと勘繰ってしまう。

 死刑に対して肯定的な方々はぜひともご一読願いたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年4月18日
読了日 : 2015年4月18日
本棚登録日 : 2015年4月18日

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