大不況には本を読む (中公新書ラクレ 321)

著者 :
  • 中央公論新社 (2009年6月1日発売)
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感想 : 38
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 タイトルからすると「読書のススメ」のようにも思えるが、内容としては橋本さんの思想を数年前の経済に当てはめたもの。「不況」を議論の端緒として「読書」をはじめとした教養論へと発展していく。

 現状、とくに政治や経済に対するアンチテーゼを産業の発展や歴史を絡めて論じている。よくありがちな「このままいくとヤバイよ」という指摘が主だったものだが、その過程で今の世の中の仕組みを解りやすく説明してくれているので、経済至上主義を肯定するにしても否定するにしても非常に有益な知識を得られる。出版時の2009年の状況よりも、選択肢がある程度変化している2014年現在のほうが実感を持ちやすいように思う。

 次々と現れては消える様々なファクターを操作することによって最終的な結論まで飽きさせない。こうした技術は小説も書ける作家ならではだろう。「景気が良くなればみんな幸せ」というエコノミスト的論調に対する反論は、橋本さんの思想をある程度知っていれば予測できる。それは思考の高度な体系性を証明するものといえるのではないか。

 終盤には橋本さんによる「読書論」も展開。他著でも聞いたような気もするが、本書では「対策としての読書」とでもいうような実践的な「意義」をレクチャーしてくれている。「読書」と表してしまうと、なんとなく仕事の合間に行う「趣味的」なものという印象があるが、本を読むことは「情報収集」の一方法であることは間違いない。情報収集は生きていくうえで必要不可欠な活動であることを否定する人はほとんどいないだろう。そうした点も含めて本書の結論を受け止めてみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年9月20日
読了日 : 2014年9月20日
本棚登録日 : 2014年9月20日

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