タイトルからすれば「品格を重んじる輩」を非難しまくる論調かと思いきや、著者自身がけっこうな品格を持っている。だからこそ「過剰に品格を強調することは上品とはいえない」ということなのだろうか。いずれにしても「品格」に関して絶妙な考察をしている。
全体的に女性色を意識したよくありがちなエッセイなのだが、日常風景を題材として著者の美学を語るような雰囲気が単なる雑談で終わっていない。やたら「バカ」の文字が踊っているが、それほど汚い罵りが目立つというわけではない。むしろ「理不尽さを平気で放置している世間一般」とでも言うべきものを批判している様子には好感が持てる。もちろんそれは思想が一致した故であって、もしも反対の考え方をもっている人が本書のような文章に接すれば格好のターゲットにされてしまうだろう。
「品格」とは一般的に「いい」「わるい」では語れない性質のものである。一般的に「品格がある」という評価は、その場その時における多数の人達がある人に対して「上品である」ということを認めることによって成り立つということ、すなわち場所や時間によって異なるということがいえる。これはなにも「品格」に限らず、物事の考え方すべてに通じることであろう。そして「事実」についても完全な「真実」というものがあるのか疑わしい。事実はどうしても人間の思想が絡んだうえで伝えられたり、場合によっては「創られる」ものでもあるからだ。「品格」あるいは広く物事を語るには「あくまでも私的には」という前提があることを心得ておきたい。
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- 感想投稿日 : 2015年1月2日
- 読了日 : 2015年1月2日
- 本棚登録日 : 2015年1月2日
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