実存主義入門: 新しい生き方を求めて (講談社現代新書 168)

著者 :
  • 講談社 (1968年11月1日発売)
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感想 : 5

新書だが、内容的には学術書レベルかと思われる。まあ、現代人から見れば、50年まえの新書なんて学術書レベルにしか見えないのかもしれないが?

ちなみにここで実存主義者として括られていたのは、キルケゴール、ハイデガー、ヤスパース、サルトルの四人である。このほかにも、シェリングやマルセルなども考慮されてはいるものの、著者の基準からすればこの四人が、「実存」と本格的に格闘した人物ということになる。著者は、この四人を更に、キルケゴール・ヤスパースと、ハイデガー・サルトルという組み合わせにわけている。前者は、「個人」としての実存に取り組んだ人物として、後者は「他者」を意識しているという点で、それぞれの捉える実存が明確に異なってきていると述べている。また、前者は「信仰」を抱いており、後者は「無神論的」である。とはいえ、前者の二人が捉える神はキリスト教的には異端とされる神であろう。彼らが捉える神というのはそうそう都合のよい人物ではなくて、彼らの実存を根拠付ける存在である、「神」であり「超越者」なのである。神や超越者なしに、彼らの実存は存在しえない。そして、その実存を捉えるために、「理性」があり、理性を介して、実存が彼らの「現存在」と結びつくこととなる。もちろん、ヤスパースは歴史性なども考慮しているものの、やはり彼らが考えるのは基本的には自分を越えうる存在である。彼らは恐らくはそれほど他者を信頼できなかったのだろう。ある意味で正直だったのだ。マルクス主義者のように、プロレタリアートとかいうよくわからぬ大衆に期待するくらいなら、自らの信仰の内に、そしてその信仰の内では決して触れられぬ存在へ近づこうとたゆまぬ努力をする方が彼らにとってはより生を感じられたのだろう。ちなみに後者は「現象学的な視点」が入ることとなる。つまり、現象学的な視点というのは、ある意味で独我論(主観性)を認めながらも、それらが複数存在しているということからも目をそらさない。それゆえに、我々はそれぞれの主観性を結びつけることで(合意を得ることで=間主観性)生きていられる=実存していられる。ということは、前者が「個」と「超越者」や「神」、あるいはキルケゴールが言うところの自らとの関わり合いではなくて、他者との関わり合い=「関心」が必要である、と言える。また、これはサルトルの言う、「対自」と「即自」も同様のことを明らかにする。即自は簡単に言ってしまえば身体のようなものであり、それに対して対自は絶えず不安定なもの。言うなれば意識や主観のようなものだろう。その対象を明確に把握することは出来ず、我々は絶えず不均衡に晒されている。我々は決して他者の痛みを知りえないし、自らの意識を対象として捉えられはしない。ここから見えてくるのは、サルトルは、キルケゴールやヤスパースの「個」の視点を踏まえつつも、「他者への関心」も捉えているために、対自には「自分・他者」との隔絶が共に含まれているということだろうか?ともかくそのような点ではサルトルは鋭いのだが、彼はマルクス主義に「人間性」のようなものを含めることで、思想が完成するといった具合のことを考えていたらしく、このあたりはかなりきわどくなってくる。といった具合に実存主義についてあれこれ述べられるのだが、最終的に実存は何かといえばそれは我々現存在が生きているということに他ならないのだろう。我々は必ず死に行く。そして、死へ向かって不安を感じながら(本来態)、あるいはそれから目を背けて日常にたいらくしながら生きている(非本来態)。だが、どちらも実存なのである。そのような意味では実存は正しいあり方・あるべきあり方を提示しているわけではなくて、ただ、「自分がそこにいる」という奇跡のようなものを最終的には暗示しているのではないかと思われる。そしてそのことを本当の意味で理解するためには、自分が「存在」しているということへ本格的に考えをめぐらせる必要がある。更に言えば、「現存在としての自分があるということはどういうことか?=実存しているということはどういうことか?」や「実存とは一体どういうことなのか?=実存の構造とは?」と考えをめぐらせることであり、前者は「実存的」、後者は「実存論的」ということになるであろう。ただ、どちらにせよ、帰着するのは「この自分がこのときにいるという奇跡」であり、そのためにはハイデガーが存在を捉えるための道具としようとした「時間」なども必要となってくるのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学、思想
感想投稿日 : 2011年12月13日
読了日 : 2011年12月13日
本棚登録日 : 2011年12月13日

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