もう少し知りたい人のための 「ソフィーの世界」 哲学ガイド

著者 :
  • NHK出版 (1996年6月1日発売)
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感想 : 19

本編を読んでいないのにこの一冊を読んでみる。本編はちょっとボリュームがあるのでここでエッセンだけもらおうという作戦。とはいえ、本編も持っているし、興味もわいたのでそのうち読むかもしれない。個人的に哲学史には飽き飽きしていたのだけれども、本著は組み立て方が意外と面白かったので意外とツボにはまった。一般的な哲学史の流れとしては、イオニア→ソクラテス・プラトン→アリストテレス→中世(アウグスティヌス、トマス)→デカルト→スピノザ→カント→(このあたりにロックとか)→フィヒテ→シェリング→ヘーゲル→キルケゴール→ショーペンハウエル→ニーチェ→フロイト→フッサール・ベルクソン→ハイデガー→サルトル→構造主義→ポスト構造主義→……的な流れになるのかな?本著もそんな感じだけれど、たとえばニーチェにほとんど触れなかったり、サルトルにけっこう重きを置いたり、スピノザやフィヒテ、シェリング、連合主義経験主義にについてそれなりに述べたりしていて、なかなかに面白かったかな。哲学の発達というよりは哲学史を用いることで、疑問がどんどん移り変わっていくさまが描かれているといった感じがなんかいい。後、意外とかなり本格的なところにまで言及してて、カントの定言命法や仮言命法とか、アリストテレスの質料と形相とか、デカルトの延長と精神とか、まあそれをヘーゲルの弁証法によって乗り越えるみたいな歴史観でまとめられるのはあれだけれども、ただ本著はやはり哲学史をなぞっているのだから、ヘーゲルからは抜け切れないのだろうなとも思う。そのあたりが本著の限界なのかもしれない。つまり、実際の哲学は哲学史みたいな進み方はしないと思う、そんなにきれいなものじゃないし、そんなにきれいにまとめられるようなものでもないだろう。しかし、ソフィーは紙の上での登場人物たちであり、その登場人物たちが書き手を見つめているが、しかしその書き手も本著の作者によってつくられた人物でしかなく、ではその著者の実在は保証されうるのかといえばそれはなんともあやしげなことではある。著者は最終的にひどく当たり前な結論にもっていってしまっている、まあ哲学的な問いを減ることで当たり前のことが本当の意味で実感される、ということなのかもしれないけれど、けれど、そうして当たり前の答えに収束させてしまういうことは、結局のところ哲学をリタイアしたということになりはしないか?終わらないから哲学が生まれたのだと俺は思うのだ。終わらせられるのものならば、哲学は生じなかっただろうし、終わらせられないものだから哲学は哲学たりえるのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学、思想
感想投稿日 : 2011年9月16日
読了日 : 2011年9月16日
本棚登録日 : 2011年9月16日

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