すべてがFになる (講談社文庫)

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本棚登録 : 17936
レビュー : 2345
著者 :
kazzu008さん 小説(エンターテイメント)   読み終わった 

言わずと知れた森博嗣先生のデビュー作。
今さら感満載ですが、拝読させていただきました。
僕が今まで読んだことのある森先生の作品は「キルドレ」と呼ばれる戦闘機のパイロット達が繰り広げる戦闘機の空中戦を描いた『スカイ・クロラ』シリーズ、孤高の侍・ゼンを主人公とした剣客小説『ヴォイド・シェイパ』シリーズ、そして最近シリーズが終了したウォーカロンと呼ばれる人造人間をテーマとした未来社会を描く「Wシリーズ」と見事に最近のものに偏っています。
このような順番の読み方をしている自称・森博嗣ファンの僕などは真の森博嗣信者から異端審問にかけられ焚刑に処せられてもなにも文句は言えないので、あえてそこは黙っていようと思いましたが、おっと、うっかり書いてしまいました(笑)。

それにしても、これがデビュー作って凄いな。
小説の完成度が半端ないし、全く古さは感じない。(一点だけ、主人公の犀川先生が煙草吸い過ぎなのは気になったw)
本書は密室殺人をテーマにしたミステリー小説なんだけど、理系ミステリーの元祖と言われるだけあってそっち系のトリックが面白い。
やはり森先生自身が工学博士であり、その方面の専門家というところが大きく影響しているんだろうね。

でも一番衝撃が大きかったのが主人公の犀川先生でも西之園萌絵でもなく、やはり真賀田四季博士の存在感だよね。
真賀田四季はWシリーズにも『伝説の研究者』ということで出てくるから存在は知っていたけど、デビュー作からここまで大きな存在感を持って登場しているとは思わなかった。

真賀田四季博士は、天才プログラマーであり、幼少のころから天才の名を欲しいままにしてきた女性。そして15年前のある事件以来、孤島にある研究所に彼女が監禁状態になっているところからこの『すべてがFになる』は始まる。

真賀田四季博士の外見の美しさ、独特な考え方、生死を超越した価値観、天才的な才能、そして、そこはかとなく漂う不気味さ、いずれもこの本を読む者に対して圧倒的なイメージを植え付ける。
そして、彼女の放つセリフがそれぞれ、深い。
 「眠りたいって思うでしょう?
  眠ることの心地よさって不思議です。
  何故、私たちの意識は、意識を失うことを望むのでしょう?
  意識がなくなることが、正常だからではないですか?
  眠っているのを起こされるのって不快ではありませんか?
  覚醒は本能的に不快なものです」

 「死を恐れている人はいません。
  死にいたる生を恐れているのよ。
  苦しまないで死ねるなら、誰も死を恐れないでしょう?
  そもそも、生きていることの方が異常なのです」

いや~、深すぎて。もう、この本を読みながら「いつ死んでも悔い無し」って心境に到達してしまう(笑)。
森博嗣先生にとって『真賀田四季』とはどのような存在なのだろうとふと考えてみる。
このデビュー作からその後、数々のシリーズに彼女は登場する。現在から数百年後を描いているWシリーズにですら『マガタ・シキ』として、もはや神に近い研究者のような形で姿を現す。

森先生の自己の投影?理想の女性?人間が到達すべき完全体?神であり、あるいは悪魔かもしれない存在?

この命題は、いちおう読書人の端くれとして自らの人生をかけて取り組む価値のあるテーマだと、今、確信しました。(真顔)
この『すべてがFになる』が発表されたのは1996年。今から23年前、森先生が39歳の時の作品。それ以後、数々の小説が発表され、シリーズものの小説だけで72冊(最新の『それでもデミアンは一人なのか?』まで含め)もの小説が刊行されている。この20数年でこれだけの森ワールドが築かれ、真賀田四季博士はそれぞれのシリーズでキーパーソンとして機能している。

真賀田四季の犯した『罪』を絶対に許せない、精神的に受け付けられないという読者もいるだろうし、そこは当然森先生も認識しているんだろう。しかし、あえて『真賀田四季博士にその『罪』を犯させたこと』についても、研究すべき対象となるはず。

次作からは、先ほど掲げたテーマを念頭に置きつつ、しっかりと順番通り読んでいこう。
という訳で、S&Mシリーズの第2作は『冷たい密室と博士たち』だね!
あ、でもWシリーズの直接の続編であるWWシーリズの『それでもデミアンは一人なのか?』が発表されてしまったので、この本は先に読んじゃうと思います☆
ウグイとハギリ博士は結局どうなったのかな~?

レビュー投稿日
2019年7月5日
読了日
2019年7月3日
本棚登録日
2019年7月5日
14
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