歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか

著者 :
  • 毎日新聞出版 (2020年8月3日発売)
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本書は「なぜテロリストが誕生するか?」ということをジャーナリストである著者が研究し、記した本である。

著者はテロを研究する以前は、
  もし自分が将来テロを起こす可能性があるか?
という問いには
  自分は100パーセント無い
と答えることができると思っていたそうであるが、テロリストを研究するにつれて、人間は誰もがテロを起こす可能性があると思うようになったという。

しかし、同じ環境に置かれても全員がテロを起こすわけではなく、そこにはテロを「起こす人」と「起こさない人」がいる。

ではその違いはどこから発生しているのか?
それを細かく研究し、本書にはその結論が書かれている。

その違いの一つは、他者に救いを求めることができるスキルを持っているか、持っていないかということである。

そんなこと誰でもできるだろうというかもしれないが、人生で成功してきた人間こそ、他人に助けを求めるということは難しいのである。

また本書では、人間の暴力性についても記されている。
人間の暴力性はもともと誰もが持っており、それは実験でも証明されている。
スタンフォード大学での有名な実験で、フィリップ・ジンバルドー博士により実施された『監獄実験』というものがある。
この実験は無作為に選んだ白人の男性をくじ引きで二つに分け、一方のグループは看守役、もう一方のグループは囚人役を演じさせたのであるが、実験中にあまりに看守役たちの行為が過激にエスカレートしたために、実験途中で中止となったという実験であった。

その他にも数多くの研究結果等が論じられているが、この分野については、まだまだ研究途上であり、著者は独自に研究を進め、みずからその結論に至っている。
見事である。

本書は、テロを起こす人間、そしてそれを防ぐ方法が書いてある学術書であるが、著者がジャーナリストから学者へ移行していく手記としても読むことができる。
非常に興味深い本であった。

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カテゴリ: 学術書
感想投稿日 : 2021年6月17日
本棚登録日 : 2021年6月17日

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