日本の原子力報道が危険性を強調することにばかりとらわれ、真実を伝えていないことを訴える本書は、2004年に元読売新聞の記者によって書かれた。
2002年にニュース23で原発に対する地震のリスクを懸念するコメントをした筑紫哲也に対して筆者はこう反論している。『確かに地震は恐い。地震で原子力発電所は大丈夫かな、と思うのは当然である。だから専門家たちが耐震性を検討し、安全と認めたのである。それを浅い知識で「危険だ」と切り捨てることは、テレビの影響力から見て感情的リスクだ。』
福島第一原発事故のあとでは、不勉強で感情的な筑紫哲也の大ざっぱではあるが的を射たコメントと本書筆者の積み上げた知識にもとづく精緻な大間違いが際立って仕方ない。筆者の意見は決して間違っていない。
この状況においても論理は正しい。ただ現実におこった悲劇を前にして論理的な正しさは人を救えないという事を、僕らは今回の事故から学んだのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会問題全般
- 感想投稿日 : 2011年5月1日
- 読了日 : 2011年5月1日
- 本棚登録日 : 2011年4月20日
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