人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2015年9月30日発売)
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著者によると「教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや楽しいことを増やすためのツール」であり、もう一つの本質は「自分の頭で考えること」にあるという。一見、教養人のように見える評論家やコメンテーターと呼ばれる人たちは、往々にして反対のための反対をする傾向があり、問題の全体像・本質が見えていないことが多い。物事の本質・背景を客観的に掴み、「自分の頭で考えて本当に納得のいく答えを見出し、より良い社会を作るために行動に移し、それが自分の生活の向上にもつなが」(p.31)っている、その様に生きる人のこそが「教養人」である。「納得のいく答え」を導き出すコツはふたつ。一つ目は、「タテ」(時間軸・歴史軸)と「ヨコ」(空間軸・世界軸)で考えること(p.63)。そして二つ目は「数字・ファクト・ロジック」で考えるということ(p.66)である。確かに、アメリカのリベラルアーツカレッジで学ぶ科目群の学習目標と一致するといえる。

「中国はロシアのように崩壊するか?」対する回答が興味深い。「ロシア人は読む本がなかったので勉強の教材がなく、国を治める術を知らずに滅んだ。彼らは、マルクス、レーニンしか読んでいない」。しかし中国人は、それに加えて毛沢東や4千年の統治の「歴史」(中国史書に記された最古の王朝「夏」から数えて)を学んでいる。そのうえ、中国人の官僚の優秀さ、勉強の熱心さを称賛している。中国の大学生についても日本の大学生とは全く違うハングリー精神をもって学んでいる人が多い。とすると、崩壊の心配はむしろ日本のほうかも。

著者は最後に、「私たちはもっとメリハリのある生き方をしなければならない」といい、「職場や仕事に従属した意識を改める一方、合理的な仕事の仕方によって極力無駄を省き、その分私生活を充実させる生き方にシフトすべき」として、締めくくっている。しかし要は、シフトして得た時間を、例えば「本・人・旅」といった著者が教養を培ったという時間に充てることができるのかという点に尽きると思う。日本の経済的繁栄にもかかわる問題だけに、重要な課題である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自己啓発
感想投稿日 : 2017年10月29日
読了日 : 2017年10月22日
本棚登録日 : 2017年10月22日

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