伊賀路に吼える鬼婆: みならい忍法帖 (角川スニーカー文庫 322-1)

著者 :
  • KADOKAWA (1989年7月1日発売)
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本棚登録 : 13
感想 : 1
4

読者メーターのお気に入りさんの思い出の小説だということで購入。

はじめの、主人公が暗闇の砂丘でブラジャーを拾うシーンは(面白くなるのかこれ?)とイヤな予感がしたが、さやかの正体が分かり「婆どの」が登場し始めてからぐんと面白くなった。

約30年前の物語だけあって、今時のライトノベルとは違う価値観を根底にしている。
主人公は成績も悪くお調子者でスケベ、4人兄弟の三男であり、可愛い子には目移りし飽きっぽいが人一倍正義感が強い。エリートでも不良でもない、ごく一般的な男子。幼なじみはしっかり者の女の子。すぐ暴力的を振るうし口は可愛くないが、主人公のことをちゃんと面倒をみる優しい心のある子。ヒロインは高嶺の花で、変にラッキースケベは起こらず、あくまで高嶺の花として描かれている。

ストーリーもなかなか起伏に富んでいて楽しい。自転車で日本一周旅行を断念したら、勘違いから殺されそうになって忍者修行をする羽目になり、脱出を企てるも失敗。全般的にユーモアに富んでおり、超人的なことをしているのにどこかとぼけた味がある。ライバルでヒロインのフィアンセである服部半蔵や、不登校や家庭の事情を抱える学生など、どの登場人物も生きており、主人公とヒロインを目立たせるためだけに登場するようなモブキャラがいない。前出のような、家庭の事情をはじめとする抱える子供に向ける作者の目及び主人公の心が優しい。正論を振り回したりせず、変に同情したりせず、そのままを受け入れてそのままで生きている。主人公は幼なじみの美樹に対し変に突っ張ったりせず、ごくごく自然体に生きている。

直前に読んだライトノベルがライトノベルだからかもしれないが、今時のライトノベルは女子の露出が高すぎる。ラッキースケベやハーレム展開が過ぎるぞ!
正直なところ、読むのが苦痛になることも覚悟しての購入だったが、予想以上に楽しめた。しばらく、昔のライトノベルを漁ってみようかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2015年8月26日
読了日 : 2015年8月26日
本棚登録日 : 2015年8月26日

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