予備知識無しでページをめくり始めるとそれは短編集だった。
「遠い世からの手紙」
「歴史の風景」
「同時代のひとびと」
「身辺風土」
と大きく四つにくくった副題を並べ、その中に全29編がそれぞれ並べられている。書名の「ある運命について」はその中の一遍のタイトルでありながら全体も内包する二重の意味になっている感があり妙なり。
前半は「司馬作品 あとがき全集」とでも呼んでよいような内容で、ある程度の数の司馬作品を読了してから読むとお得感が倍増する仕組み。読了組として「坂の上の雲」「菜の花の沖」「胡蝶の夢」「燃えよ剣」「竜馬がゆく」「ひとびとの跫音」が、未読了組には「箱根の坂」「播磨灘物語」が挙げられ、これらについては近々にも挑戦して早々にまたこの記述に戻ってきたいと思わされた次第。
司馬作品を離れた文章の側においては、終戦後とほうもない時間を経過してから帰還兵となった二人の名を挙げ、シバさんが彼らに対して思うことを語る部分も興味深かったが、インパクトがあったのは「山姥の家 ―人間を所有すること」という作品。戦前戦後を生き抜いたあるシバさんの知る女性に関しての徒然とした記述なのであるが、そのひととなりの強烈さにしばらく虜にされてしまった次第。
全体的に読みやすくお得感満載。手元においてより頻繁に帰ってきたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年9月18日
- 読了日 : 2015年4月27日
- 本棚登録日 : 2019年9月18日
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