グッド・バイ (新潮文庫)

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本棚登録 : 2448
レビュー : 196
著者 :
Keitoさん 物語   読み終わった 

戦争という時代にあっても、この太宰という人間はやっぱり太宰という人間なんだと思ってほっとする。戦争だろうと、貧しかろうと、家が焼けようと、やっぱりこの人間はものを考えている。そんなところとは関係なく、考え続けている。仮に徴兵されたとしても、やっぱり酒を呑んで考え続けていたんだと思う。それが、この太宰という人間なのである。
彼にとって、別にそんな些末なことはどうでもいいのである。なのに、かえってそういうことをとやかく言われるからうんざりして逃げ出したくなってしまう。確かに彼と生活を共にする人間からすればたまったものではない。彼は生活しないように生活しているのだという二重性を、誰が生活している人間の中で理解できようか。もともと世を拗ねた人間が、どういうわけか世の中で生きてしまっているのである。これが彼にとっては屈辱的なことであった。生きるというのはこういうことなのか、彼は津軽で生まれ育った時にはもうそう感じていた。早く生き過ぎたと言ってもいい。彼にとっては、もう十分生きたからさっさと死にたいくらいのことなんだったと思う。
だが、死ねばすべて解放されるというのがわからない。死の魅力というのは、あくまでことばの上に過ぎない。だって、誰も死んだことがないから。じゃあ死んでみようということになるが、死んだその時、死んだと感じるその存在はいるのか。そんなものいないのである。死に対してなぜそんなに魅力を感じるのか。別に善く生きられないのに生きろとは言わない。だが、死ねば終りだと思うことだって、彼が厭わしく感じてやまない生活と何ら違いはないのである。その辺、「反抗だ」と言ってのけたカミュの方が断然上である。

レビュー投稿日
2016年10月24日
読了日
2016年10月24日
本棚登録日
2016年10月24日
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