南国の鮮やかな色彩に囲まれて
ひとりの人間が生き、死んだ。
それはことばと共に、書くことだけを頼みに。
中島敦は、おそらくここで語られるスティーブンソンに自分を重ねている。中島がスティーブンソンとなって現れたと言った方が正確かもしれない。
スティーブンソンの手記と落ち着いてそれを見つめようとするまなざしとが交互に入れ替わり、南国の風土が立ち上ってくるよう。
平坦に繰り返される日常。浮かんでは消える現象たち。それでもことばと共に在る者として、目覚めてしまった自分。カフカやカミュ、ニーチェに似た諦めさえも許されない息遣い。
南国の異邦人に日本の異邦人は何を見たのだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
物語
- 感想投稿日 : 2015年2月18日
- 読了日 : 2015年2月18日
- 本棚登録日 : 2015年2月18日
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