<50年代のアメリカ。青年サル・パラダイスはディーン・モリアーティに導かれ、西部へ放浪の旅に出る・・・>
ビート・ジェネレーションのバイブル、“On The Road”の福田訳。
「ビートジェネレーション」とは既成の価値―物質文明、体制、権威など―をふきとばし、
新しい価値観を求めた人々のことであり、そのような文学を送り出してきた文学世代のこと。
ヘミングウェイやフィッツジェラルド、フォークナーの「ロスト・ジェネレーション」は知っていたけど、
ちょっとこれは知らなかった。なのでこれがヒッピー文化の前身だったのか~と納得。
それにしてもここでいう「ビート」の意味は何なのか、どこにもはっきり述べられてない。
ビート=Beatで単純に考えれば、「撃つ」=既成の文化をふきとばす・・・とも思ったけれど、
「路上」を読むと「うちひしがれる」という意味に感じた。Beatedじゃないけれど・・・
それほどこの本にでてくる人は、ディーンを中心に刹那的な人々ばかり。
セックスにドラッグ、アルコール。一瞬の中を生きているような彼らは、現実を見れば、
定職がないにもかかわらず、子供や妻がいて、それを気にすることもなく各地を放浪する。
しかしそこには今をどうにもできない苦しみがある。
そんな彼らの仲間でありながらも、半歩下がったところから見ているのが主人公サル。
彼はたぶん作者ジャック・ケルアック自身である一方で、読者自身の姿でもあり、
彼を通してビート達の苦しみ、哀しみ、孤独を間近に感じ取ることが出来る。
それにしても、これほどまでに人が旅にひきつけられるのは何なのか。
ディーンは文中でサルに言う。
「おれたちは時間を知ってるんだ。時間を遅らせ、歩き、理解するやり方を知ってるんだ。」
そしてケルアックはこう書いている。
「生活の内側はすべて、終わりもなく始まりもなくむなしかった。」
たぶん彼らにとって旅=青春だったのだ。だから何度も旅に出た。
青春を終わらせたくなかったのだ。
それはラストのパラグラフ、あまりに美しく、寂寥感に溢れたホイットマンばりの文章に集約されていると思う。
でも旅=青春ではないはず。
旅=人生だ!!
沢木耕太郎の「深夜特急」と並んで、旅のバイブルになるだろう作品。
名文が多いこの本のBGMはもちろんジャズで♪
- 感想投稿日 : 2012年3月5日
- 読了日 : 2010年9月5日
- 本棚登録日 : 2012年3月5日
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