路上 (河出文庫 505A)

  • 河出書房新社 (1983年2月4日発売)
3.50
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感想 : 83
4

<50年代のアメリカ。青年サル・パラダイスはディーン・モリアーティに導かれ、西部へ放浪の旅に出る・・・>

ビート・ジェネレーションのバイブル、“On The Road”の福田訳。

「ビートジェネレーション」とは既成の価値―物質文明、体制、権威など―をふきとばし、
新しい価値観を求めた人々のことであり、そのような文学を送り出してきた文学世代のこと。

ヘミングウェイやフィッツジェラルド、フォークナーの「ロスト・ジェネレーション」は知っていたけど、
ちょっとこれは知らなかった。なのでこれがヒッピー文化の前身だったのか~と納得。


それにしてもここでいう「ビート」の意味は何なのか、どこにもはっきり述べられてない。
ビート=Beatで単純に考えれば、「撃つ」=既成の文化をふきとばす・・・とも思ったけれど、
「路上」を読むと「うちひしがれる」という意味に感じた。Beatedじゃないけれど・・・

それほどこの本にでてくる人は、ディーンを中心に刹那的な人々ばかり。
セックスにドラッグ、アルコール。一瞬の中を生きているような彼らは、現実を見れば、
定職がないにもかかわらず、子供や妻がいて、それを気にすることもなく各地を放浪する。
しかしそこには今をどうにもできない苦しみがある。

そんな彼らの仲間でありながらも、半歩下がったところから見ているのが主人公サル。
彼はたぶん作者ジャック・ケルアック自身である一方で、読者自身の姿でもあり、
彼を通してビート達の苦しみ、哀しみ、孤独を間近に感じ取ることが出来る。

それにしても、これほどまでに人が旅にひきつけられるのは何なのか。
ディーンは文中でサルに言う。
「おれたちは時間を知ってるんだ。時間を遅らせ、歩き、理解するやり方を知ってるんだ。」
そしてケルアックはこう書いている。
「生活の内側はすべて、終わりもなく始まりもなくむなしかった。」
たぶん彼らにとって旅=青春だったのだ。だから何度も旅に出た。
青春を終わらせたくなかったのだ。
それはラストのパラグラフ、あまりに美しく、寂寥感に溢れたホイットマンばりの文章に集約されていると思う。

でも旅=青春ではないはず。

旅=人生だ!!


沢木耕太郎の「深夜特急」と並んで、旅のバイブルになるだろう作品。
名文が多いこの本のBGMはもちろんジャズで♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月5日
読了日 : 2010年9月5日
本棚登録日 : 2012年3月5日

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