緑の家(上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
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南米文学の巨匠、バルガス・リョサの初期の長編。

この小説の楽しみは、なんといってもその構成の巧みさでしょう。場所と時を異にする複数の話が同時進行し、徐々に関係性の糸が紡がれていき、ついにはさまざまなひと、場所、時が一つの巨大な織物のようになる。

ペルーのアマゾンの密林地帯、その中の川沿いの街サンタ・マリーア・デ・ニエバと、海岸近くの砂漠の街ピウラを主な舞台として、濃密な人間劇が繰り広げられる。

ピウラの娼館、最初の〈緑の家〉を作ったハープ弾きドン・アンセルモ。最初の〈緑の家〉は、ドン・アンセルモの子を身ごもった盲目の孤児、少女アントニアが出産時に亡くなったことをきっかけに、ガルシーア神父の焼き討ちに遭うも、遺児 ラ・チュンガにより〈緑の家〉が再興される。そして、ハープ弾きドン・アンセルモの楽団誕生の経緯。

アマゾンの密林地帯の街、サンタ・マリーア・デ・ニエバの修道院で育てられたインディオの娘ボニファシア。修道院で生活していたインディオの娘たちを脱走させた罪で、修道院から追放され…。

インディオたちから安く買い取ったゴムの密輸で荒稼ぎしている商人レアテギ。サンタ・マリーア・デ・ニエバの治安警備隊員たち。彼らと、アマゾンの密林のインディオの男フムをめぐる物語。

アマゾンの密林の島で、盗賊としてインディオたちと生活している日系人フシーアとその妻ラリータ、そして船頭ニエベスをめぐる物語。

ピウラの貧民街マンガチュリーアの番長たちと、〈緑の家〉をめぐる物語。

登場人物の多さと (読むときにはメモを作ることをおすすめします 笑)、場面転換が独特な文体にさえ慣れてしまえば、南米ペルーの街とアマゾンの密林の濃密な空気の不思議な魅力にとりつかれること請け合いです。

最後に僕の好きな場面の引用をひとつ。
〈緑の家〉と呼ばれるのは、建物が緑色に塗られているから。そして、〈緑の家〉を作った密林出身のドン・アンセルモのハープも緑色。その理由が語られる場面。

「密林はたしかに美しい。むこうのことはすっかり忘れてしまったが、あの色だけはいまでもはっきりと覚えているよ、ハープを緑色に塗ってあるのは、そのせいなんだよ。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月23日
読了日 : 2012年3月23日
本棚登録日 : 2012年3月23日

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