太平洋戦争に向かう歴史的なホップ・ステップ・ジャンプの過程で農本主義の思想・行動家橘孝三郎に焦点を合わせて語られる。当時の思想家・社会運動家とくに北一輝・井上日召・大川周明・西田税等々と陸軍・海軍若手将校との関係も立体的に分析されている。政党政治から軍閥政治に移行するプロセスもよくわかった。そして統制派抬頭の軍人主導の社会・政治体制が完成していく経緯が詳しく語られている。陸軍・海軍・農民(一般人)裁判のそれぞれの当局の対処の仕方が大きく異なり、反応する国民大衆の熱狂も手伝い、結果として陸軍が大きく政治権力を握っていくくだりは納得。近衛の存在がこの時代の諸々の危険な関係因子をごっちゃにして飲み込む役割で登場してくる。橘孝三郎、時代が違えば、状況要因が異なれば吉田松陰にもなれた人か。保坂正康の初期作品として歴史解明へのごつごつした気概を感じる。
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- 感想投稿日 : 2012年12月22日
- 読了日 : 2012年12月17日
- 本棚登録日 : 2012年12月20日
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