簡単に踏み込むことのできない日本のタブーについて取材しておりなるほどと思わせられる。内容自体はタブーをテーマにしているだけあって目からウロコなものが多く勉強になった。
だが、作者である小林よしのり本人がこの問題を取り上げたモチベーションは一体どこにあるのだろう。なんだかそこが気になった。
読んでいると「自分はこんな苦境に立たされているがそれでも頑張った」「大変な取材だったが自分はみんなの為にこれだけ苦労した」という自己アピールや正当化が延々続くような箇所や、仮想敵に向かって言い訳めいた罵倒を吐き続けるような箇所がいくつもある。一見言っていることはまともなようだが、どうもそれらを読んでいると作者が今回「日本のタブー」という問題を題材として選んだ理由は単に「その時たまたま目についた新鮮で美味そうな食材だったから」というだけに思えてならなかった。
作者はこの本で取り上げているタブーとなった問題に対して特筆するような主張をそもそも持っておらず、単に「世間から褒められたい、認められたい」という欲求だけが先行して存在していて、その願望を叶えるために一番適した材料が今回はたまたまアイヌや沖縄の問題だっただけなのではないか。作者自身はこの問題についてどうしたいとか、どうあるべきといった情熱や意見など本当は持ち合わせていないのではないか。そんな風に感じた。
そのような欲求が作品上にむき出しになっていること自体はスタンスの問題なので、悪いことではないのかもしれない。僕は小林よしのりの作品をあまり読んだことがないが、それこそが彼の味でその姿勢こそが面白いポイントであるのかもしれない。
ただ、自分にはどうも合わなかった。
ページの至る所にこめられた作者の怨念のような「褒められたい」「認められたい」がノイズにしか感じられず、本題とは別の部分で心底げんなりした。
- 感想投稿日 : 2011年11月24日
- 読了日 : 2011年11月24日
- 本棚登録日 : 2011年11月24日
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