こゝろ (角川文庫 な 1-10)

著者 :
  • KADOKAWA (2004年5月10日発売)
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本棚登録 : 8487
感想 : 656
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夏目漱石の作品の中では、有名且つ読みやすい作品だと思っています。Kと先生は違っていたからこそ友人だったのかもしれません。Kがだんだんと変化していくことに動揺する先生の感情の揺れ動きは、むしろお嬢さんだけではなくKにさえも愛着があったことを少しずつ描きます。武者小路実篤の「友情」を読んだ時のような感覚であり、実篤の「友情」よりも女性的感覚で心情が描かれていく。嫉妬や怒りが「友情」には悶々としているのに対して、「こゝろ」には後悔と贖罪が延々と続きます。生きているかぎりは、罪を償い続けなければならない。Kの貫いた自分らしさに羨ましささえ伺えます。その直向きさに先生こそが惹かれていたのに、最悪のかたちで裏切ってしまったことで、恋も友情も一瞬にして灰となってしまったのかもしれません。この作品は国語の教科書にも多く起用されており、自らも学生時代にこの作品を一度読みました。けれども読むたびに、また違うところが見えてくるのがこの作品だと思っています。愛読書

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: books
感想投稿日 : 2018年1月10日
読了日 : 2018年1月10日
本棚登録日 : 2017年7月17日

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