くもの巣の小道―パルチザンあるいは落伍者たちをめぐる寓話 (ちくま文庫)

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レビュー : 6
kiki72さん 海外文学   読み終わった 

1945年に終わった第二次世界大戦の同じ敗戦国側なのに、日本には日本の戦争があり、イタリアはイタリアの戦争を戦っていたのだな。日本は中国やアメリカと戦っていたし、ドイツはフランスやイギリスと戦っていたけれど、イタリアは一体何と戦っていたのだろう。パルチザンたちの敵が何なのか少年ピンの目を通して描かれるので初めのうちはさっぱりわからない。ドイツ?ファシスト?GAP?黒シャツ旅団?私が習った世界史ではイタリアはムッソリーニ率いるファシスト党が連合国側と戦争して負けたんじゃなかったっけ。こんな内戦状態になっていたとは全く知らなかった。
パルチザンの政治委員キムの語る言葉が人間を戦争に駆り立てるものが何なのかを教えてくれる。信念や思想などではなく怒りだ。自分の生活を世界を安定を奪ったものへの怒り、不当な現状に対する怒り。アフガニスタンあたりで少年たちがなぜゲリラやテロ組織に加わるのかわかったような気がする。争いのある環境に生まれてきて仲間を求めて誰かについて行った先がそういうところだったんだ。彼らに政治的思想とかそんなのないんだ。アッラーのために自爆テロをしてるんじゃないんだ、なんかもう成り行きで自分に白羽の矢が当たっちゃったからやってる的なことなのかもしれない。彼らは元々奪われているのだ、何もかもを。だから今度は奪われるものが自分の命かもしれないだけなんだ。新大久保あたりでデモをしてる人たちも原発反対のデモをしてる人たちも同じなんだ。彼らを駆り立てているのはただの怒りだ。信条なんて後付けだから論理は破綻してるし、だから何かの拍子に正反対の団体に入って正反対の主張を叫び出すんだ。
キムの言った通りあれから50年以上経つのに人間は相変わらず同じ無名者の憎しみを目に湛えながら戦いあっている。百年後も?千年後も?

レビュー投稿日
2013年11月28日
読了日
2013年11月28日
本棚登録日
2013年11月28日
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