(044)汝 (百年文庫)

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レビュー : 15
kiki72さん 百年文庫   読み終わった 

吉屋信子「もう一人の私」。吉屋信子の名は伝説的な原始少女小説の書き手というイメージで刷り込まれているが、期待に違わぬ作品。中原淳一の挿絵が浮かんでくる。選ばれることのなかった「不幸な私」というもう一つの人生(と表裏一体となった現実の幸せな人生)という少女の永遠の憧れのシチュエーション。山本有三「チョコレート」。これが一番良かった。タイトルが秀逸。恭一の間違った自己犠牲と自己満足が鮮やかにしっぺ返しを食らわせる瞬間に、彼の目に入ったものが甘いチョコレートの看板という残酷な表象。これに近いことって現代でも溢れている気がする。自分は誰かのためにやってやったと思っているけれど、それは本来自分がやるべきことからすら逃げているにすぎない。結局、恭一は働きたくなかっただけで、土肥のためという大義名分にかこつけて社会から逃げたのだ。善行をやっているつもりで、結局何もしていない。一番楽な道を選んでいる。社会問題が起こった時にTwitterで政府や企業を非難して不買運動を呼びかけたりしている人たちを思い出した。首相の天ぷらを非難する前に自分の街の雪かきをしたのか。お前らがやってるのはチョコレートを食ってることだけじゃないのか。石川達三「自由詩人」。太宰治的な自由詩人の行く末は自殺しかないのか。主人公が山名を見捨てられなかったのは、彼の中に自分のエスを見ていたからか。

レビュー投稿日
2014年2月27日
読了日
2014年2月27日
本棚登録日
2014年2月27日
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