音楽の感動を科学する ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス"になったのか (DOJIN選書35)

著者 :
  • 化学同人 (2010年10月1日発売)
3.12
  • (6)
  • (5)
  • (13)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 175
感想 : 24
1

最後の最後で、やっとこの本の意味が伝えられたというか、そこに至るまでの文章を削れば、もっと良いものになったのではないのでしょうか。いやもう、本当に最終章にたどり着くまでは、読むのも辛かったです。
著者の熱意というのは、どの形態の本であっても必要だと思います。それがわざと俯瞰的にしていようとも、わざと一人の目線にしぼっていようとも。ただそれは、小説の話であって、専門書の話ではないと思います。
この本に限っていえば、これがどの程度の専門書なのかが判断し難いことが、読みにくさに繋がっているのではないでしょうか。音楽を科学だって、へーと軽い気持ちでとったひとにとっては、あまりにも説教くさく聞こえるのではと思いますし、逆に予備知識を多少なりとも持っているひとには、既知の事柄を羅列するのにページ数をかけすぎている。その辺のバランスは、むしろ、著者ではなく編集さんのお仕事だったのではないでしょうか。それとも、編集さんを押し切って載せた文章だったのかしら。
なんにせよ、著者の「認められたい!」が前面に出すぎてしまっていて、折角のコンテキストが追いやられているように感じたところが多々ありました。
本で述べられている説に関しては、まだまだ仮説状態のものもあると思うので、今後、彼とまた他の研究者の成果を待つのみとなりますが、音楽によりテストステロンが下がる(女性の場合は上がる)のは興味深いです。音楽が娯楽以上の価値を持つという考え方には賛成です。これまでにも、様々なケースがあって、音楽に関わるひとたちはこの本の内容を経験を通して「知って」いると思うのですが、いかんせんまだ「証明」されていないので説明するのが難しい。
私が修士課程の論文を書いていた際に、教授に言われた言葉です。「論文というのは、すべてを解明する必要はない。ひとつの事柄のその小さな小さなカケラを、どうにか説明するだけでいい。あとの謎は、これから自分が、もしくは世界中の研究者たちが、一生をかけて研究し、繋げていければいい」。であれば、この本が解明していないことはすなわち、これからの課題として提示されただけに過ぎないので、大事ではないかもしれないですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 音楽関係
感想投稿日 : 2015年2月7日
読了日 : 2015年2月7日
本棚登録日 : 2015年2月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする