晩年の子供 (講談社文庫)

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本棚登録 : 1667
レビュー : 179
著者 :
kikkkkkuさん Japanese Literature   読み終わった 

山田詠美短編集

現代文の教科書に「ひよこの眼」という短編が入っているということを教えて頂き、かつ貸して頂きました。
読んでおもしろかったため、手元におきたい。So短編集,『晩年の子供』をGETしましたin book off。

いくつかの短編がおもしろかったです。

「晩年の子供」
私の周囲は、濃密な他者からの愛で満たされていた。そして、幸福な人間は、そのことに気付くことがなく、そしてだからこそ幸福でいられるのだということに私は気付いた。幸福は、本来、無自覚の中にこそ存在するのだ。(中略)自分が愛に包まれていると自覚してしまった子供ほど、不幸なものがあるだろうか。
→気付けいて不幸の理由=あ、私死ぬんだ。あ、愛されている。あ、私死ぬんだ。寂しい。不幸だ。。。この感覚、死にそうになったことはないけど、分かる気がする。

「堤防」
私はこういう運命なんだ、と思ってそれを易々と受け入れてしまう主人公。海に落ちる運命なんだ、鉄棒から落ちる運命なんだ。それに逆らうなんてばかばかしい。といって、落ちる。遅刻を避けるために走ることも、時間に逆らうことは運命に逆らうこととして走らなかった。
しかし、最後に、自殺未遂の友達を心配するあまり、走った。そのときに、気付いた。未来は、自分の意思でいかようにもなるんだ。大事なものは気持ちなんだ、って。
究極の運命論者の主人公が、運命を最後に否定できる設定は痛烈!分かりやすい!

「花火」

男と女って、まったく面倒だわ。体で魅かれあって、それに飽きた瞬間に、離れられない関係になる。体が離れられないなんていうのは、まったくの嘘。離れられなくなるのは心が結びつき始めるからよ。体も心も結びついて離れられないのは、だから一瞬なのよね。両立しない。すぐに消えちゃう。まるで花火みたいなものよ。素晴らしい瞬間だけどね。
→ただただ、ステキな表現だ。脱帽。

「海の方の子」
・良い人のふりをするには、一番、悪人なんだよ。
・哲夫くんは、もう、私にとって可哀想な人ではなくなっていたのです。
→かわいそうと思う自文化絶対主義的な言葉を使わずに、そうでない世界を見せてくれる作品。最後のお別れのシーンは読んでてしゅんとなる青春さ。

「蝉」
うるさい、わずらわしいものとして蝉を引き裂き殺した。それと同様に、わずらわしいなという人を心の中で殺してきた。蝉が短く限られた時間で死んでいく存在であることを思うと、申し訳ないことをした気持ちになる。人に対しても同様。嫌いだったら無理して嫌うようなことをしなくてもいいや、っていう寛容な気持ちになったり、煩わしいと思っていたのは主観であり、ありがたく受け入れるようになる主人公。うむうむ。

「ひよこの眼」
青春的な話。高校生がこういう本で学ぶのうらやましい。
ひよこの眼に、死を捉えているる姿を見出す洞察力、ステキですね。

レビュー投稿日
2011年3月31日
読了日
2011年2月14日
本棚登録日
2011年2月14日
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