杜子春

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  • 青空文庫 (2005年2月7日発売)
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杜子春とは杜子春伝を芥川がオマージュした作品となる。
芥川龍之介
大正5(1916)年東京帝大在学中に発表した「鼻」が 夏目漱石に評価され文壇に登場。卒業後、海軍機関学校の嘱託教官として英語を教える傍ら、「芋粥」(1916)、「奉教人の死」(1918)、第一短編集『羅生門』(1917)などを発表。 1919年海軍機関学校を辞職、 大阪毎日新聞社社員として文筆活動に専念する。 昭和2(1927)年36歳で自殺した。

杜子春あらすじある日の夕方のこと、金持ちの息子だったが、財産を使い果たし路頭に迷っていた杜子春は、ひとりの老人に出会う。

「何を考えている?」という老人の問いに対し、「今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えている」と正直に答えると、老人は埋蔵金の在り処を彼に教え、忽然と消えてしまった。洛陽一の金持ちとなった杜子春だったが、贅沢三昧で数年後には金を使い果たしてしまう。そんな中、現れたのはいつかの老人。同じ問いに同じ答えを返すと、またも埋蔵金が手に入った。

 そして案の定、浪費を繰り返す杜子春。金が底をつき、人心は離れ、ついに三度目に現れた老人に「人間に愛想が尽きた。あなたを仙人と見込んで弟子にしてほしい」と頼み込む。老人は「いかにも私は鉄冠子という仙人である」と身元を明かし、仙術で彼を神聖な山である峨眉山の絶壁に連れていくと、自分が戻るまで沈黙して待つよう伝える。

主人公が仙人にお金持ちにしてくれと頼むが、お金が無くなると冷たくなる自分の周りに嫌気がさし、仙人の弟子にしてくれと頼み込む、仙人の修行、何が起ころうとしても「声を出すな」という仙人のことばがキーワードとなる。
杜子春伝と杜子春の比較
杜子春伝は主人公の子供が殺されたときに声を出してしまう
杜子春は自分の母親が拷問を受けているのを見て声を出してしまう

親が子を思う気持ちと、子が親を思う気持ちで差が出ている。

さらに、声を出したことについて杜子春伝では仙人はなぜ言葉を発したのかと怒り主人公を突き放す。
杜子春では主人公が声を出したことを肯定し、仙人も声を出していなかったら
お前を殺していたと判断を認めている。

このことからわかるのはテーマの大きい軸の違い
杜子春伝は忠誠であり、杜子春は愛となる、
どちらのテーマからも作者の伝えたいことはわかるが、私は芥川のテーマの伝え方が上手で巧みであると考える。もちろん信義、忠誠をテーマとする杜子春伝はあまりにも酷でもやもやする部分がある、逆に杜子春では声を出さなかったら逆に見捨てていたというところからも仙人の愛を感じる、

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感想投稿日 : 2024年7月22日
本棚登録日 : 2024年7月22日

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