
中短篇によって編まれているのが、この『コレクション 戦争と文学』のひとつの特徴である。
本巻『ヒロシマ・ナガサキ』は、原民喜「夏の花」くらいしか読んだことのある作品がなかった。
全て読んでみたところ、小説として良くできているとは言い難いものもあったが、それは題材の重さに起因するのだろう。
あまりにも「伝えたい」「書き残したい」という想いが全面に出すぎてしまっているものが多かったように思う。
戦争文学や、ヒロシマ・ナガサキを扱うときの難しさがここにある。
筆を執り始めた動機自体には極めて痛切なものがあるにせよ、表現形式として(たとえばルポルタージュではなく)小説を選ぶのであれば、まず小説として成功しなくてはいけないだろう。
でなければ、いかなる想いで書かれようとも、後の世には残らない。
「夏の花」が際立って優れているのは、あの作品が描いていることや、原の想いはもちろんだが、なによりそれらが小説という形式のもとで結実し、成功しているからである。
- レビュー投稿日
- 2012年7月14日
- 読了日
- 2012年7月9日
- 本棚登録日
- 2012年6月24日
『コレクション 戦争×文学 19 ヒロシマ・ナガサキ』のレビューへのコメント
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