バイオレント・サタデー (角川文庫 (5690))

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感想 : 5
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ラドラム畢生の傑作「暗殺者」を読み終えた時の感動は忘れられない。綿密に練り上げた謀略を主軸に、記憶を失った男のアイデンティティを巡るストーリーは、娯楽小説の到達点ともいうべき作品だった。当然の事、大きな反響を呼んで80年代に多くの作品が翻訳されたが、ついに「暗殺者」を超える評価を得たものはなかった。ラドラムが得意とするジャンルは、世界的な陰謀を背景とする巻き込まれ型スリラーだが、プロットに偏り過ぎて、人間が描けていないという欠点がある。「暗殺者」は、その類型から脱した希有な作品で、主人公ボーンの造型に秀れ、活劇にも無駄がない。

1972発表の「バイオレント・サタデー」はラドラム初期の作品で、冷戦下に暗躍したスパイを巡る話だが、洗練されていないことは仕方ないとしても、展開がぎこちなく、サスペンスが持続しない。CIA工作員が米国内部に潜伏した東側スパイを炙り出す作戦をメインとするが、対象者を罠に掛ける準備段階から実行までがまだるっこしい。容疑の掛かられた夫婦を何組か登場させているのだが、誰一人として印象に残らないのは、習作の域をまだ出ていないからだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス/スリラー
感想投稿日 : 2017年1月7日
読了日 : 2017年1月7日
本棚登録日 : 2017年1月7日

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