死にたい夜にかぎって

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本棚登録 : 590
レビュー : 54
著者 :
きいろいるーぺさん  未設定  いま読んでる 

人生というものに質量があるとするなら、それは案外、拍子抜けするほど軽いものなのかも・・・そう思わされた作品。
これはエッセイでありながら、人生訓でもあると思います。


主人公(以下ツメ君)はお世辞にも幸福な人生を歩む男とはいえない人物。3歳になる少し前に母が家を出て行く、鉄拳制裁の親父、学校のマドンナに顔にダニたくさんいそうだと、”ダニ退治”の名目でビンタされ、挙げ句の果てに笑った顔がカナブンの裏側といわれたり、最愛の彼女アスカは心の病にかかり、断薬すると殺しに来る勢いで襲ってきたり、浮気したり、風呂にはいらなくなって激臭を漂わせるようになったり、借金してたり・・・

「俺は不幸だ・・・」といっても誰も責めないような人生。
でもツメ君は親父の『どんなに辛いことがあっても、その中に一つでも楽しさを見つけて笑え』という言葉を胸に(しまってるからなのかはわからないが)

アスカが襲撃してくる度にスタンプポイントをため、たまったら自分にご褒美を買うようにしてみたり(それを自分のためでなくアスカに還元されるようにしたり)

母親と違いちゃんと帰ってくるというただそれだけでアスカを許してしまったり(やるせなさは風俗で発散)

借金を怒るどころか、唾を売る嫌な仕事を自ら行い、耐え抜いて借金の半分を返したアスカに対し感謝の念を抱き、ツメ君が肩代わりしたり・・・

後書きにもあったが、どんなに辛いことがあっても『まぁいいか』で済ませるところは本当にすごいと思いました。なんなら首都圏あたりで俺が一番幸せとか思ってそうです(^0^;)

何気に1番驚いたのは、あとがきのあとがきで、サラっと「最近こんな出来事あったんです」くらいのノリで30年ぶりに母親に再開したことをカミングアウトしたこと。その分量、わずか2文、100字足らず。『割と大きな出来事としては、作中に頻繁に登場した生き別れの母親と三十年振りに再会しました。あれだけ蓄積していた母親への恨みが一回の出会いで全て消えてしまうのだから、人生って面白いです』

『うん、すごすぎる。苦しいことに鈍感なんだよね』
『でも、それと同じくらい幸せにも鈍感だからダメなんだけどね』
とアスカがツメ君に対して言っていますが、それが一番いいのかもしれないなぁ、と読み終わって思いました。


自分が気付けた身の丈に合った幸せは素直に喜べばいいし、苦しいことがあったなら、楽しさを探してみる。それでだめなら、その苦しさを”大したこと”にしなければいい。

幸せや不幸をあれこれ考え込むより、等身大の人生を、等身大に生きる。人生も恋も、そんなテキトウでいいのかもしれない・・・


最高に無駄な恋が教えてくれる、最高に面白い人生訓でした。

レビュー投稿日
2019年3月5日
本棚登録日
2019年3月5日
2
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