犬身

3.55
  • (41)
  • (64)
  • (93)
  • (12)
  • (7)
本棚登録 : 500
レビュー : 98
著者 :
キミドリさん 本・雑誌   読み終わった 

犬身
人物
- フサ 元人間(房江) 両親は共になく、久喜と冴えない生活を送っていたが、かねてよりの希望により、犬となり、献身的に梓に仕える
- 梓 陶芸家 ゆがんだ家庭の中で兄からの性的虐待を受けて育つ。最終的に兄を殺して刑務所送りとなる。
- 彬 梓の兄。傲岸不遜なサイコパス。離婚歴あり。幼少時より、梓に性的な奉仕を強いる。
- 母 兄にべったりで、夫との関係は薄い”女帝”。最終的に彬と梓の関係を知り、その後死去。
- 朱尾 狼人間。フサエとの契約により、彼女を犬にする。腕のいいバーテンだがニヒリスト。

ストーリー

- かねてより、人間より犬になりたかったフサエは、朱尾献により犬となり、梓に飼われる身となる。しかし、玉石家はいびつな家庭環境であった。母や梓に基本的に無関心であり、兄にべったり。その兄は幼少時より、梓に性的な奉仕を強いていた。
- 父親の失踪、玉石家の経営するホテルの改装、兄の台頭、母の梓への無関心or嫌悪、そしてブログで兄が梓のふりをして、性的虐待の様子を自分に都合のいいように書いたことにより、母がその事実を知り、最終的には梓が兄に手をかけることとなった。

<抜粋>
灰色っぽい毛をベースに黒毛がまばらに混じった独特の毛色で、しっぽを巻き上がっていなくて垂れていて、けっこう大きな犬だった。

近くで見るといのは予想以上に大きく、背中の高さはフサエの腰くらいまであった。

光の当たり具合で灰色の毛の所々が銀色にきらめいた。

意外にも犬は撫でさせてくれず、口角をあげた柔和な表情のままフサエの先に立ち、一定の距離を保ちながら

犬は急に気分が変わったのか、鼻すじに深い皺を寄せて低くて太い威嚇のうなり声をたてた。

蜜月というものは多いうものか、とフサは思った。あずさは始終いとおしげに房を見ている。写真を撮るだけではなく、大きさを記録するためか画用紙に寝かせて輪郭の型をとったり、スケッチブックに写生したりするのは、仔犬の姿かたちを美術家ならではのやり方でより深く味わっているのだろう。

人間だったころは「自分に自信を持つ」とか「自分を好きになる」といったよく耳にする言い回しの意味はほとんどわからなかったのだけれど、犬になった今まさに自分が好きで自信に満ちた状態なので、跳ねのけられるんじゃないかなどという心配を一切せずに、まっすぐにあずさに向かっていき、前足をあずさの体にかけることができる。あずさが房の毛をまさぐれば、完全に受け身になってあずさの愛撫に浸りたくて、腹を上に向け、ひっくり返り「もっと」と促すのだが、そういう振る舞いもあずさに愛されていると信じられないなら不可能だった。

好きで信頼している相手に面倒見てもらうことがこんなに気持ちの良くなるものだなんて、と房は驚いていた。人間だったころには想像もしたことがなかったけれど、ご飯を出してもらったり危ないまねをしないように見守ってもらうことな気持ちよさは、心の喜びばかりではなくて、撫でられたり 抱かれたりすることの感覚的な気持ちよさとそう遠くない。相手にすべてを任せて愛情をうけるという意味では二つのことは重なるし、事実、世話をしてもらうと直接ふれられてはいないのに、胸のときめきが体中に広がって見えない手で撫で廻されているような心地になる。

レビュー投稿日
2018年12月22日
読了日
2014年3月28日
本棚登録日
2018年12月22日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『犬身』のレビューをもっとみる

『犬身』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『犬身』にキミドリさんがつけたタグ

ツイートする