NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

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レビュー : 60
キミドリさん 本・雑誌   読み終わった 

 SF初心者の自分のSF力を高めるべく、SF強化月間中です。
 あまり長くて難解なのは挫折するので、短編集から取り組むことにしました。
 一番最初に選んだのは大森望・編集の「NOVA」シリーズ。
 バリバリのハードSF作家から、ライトノベル、人気大衆作家など、超豪華な幕の内弁当の風情です。

 色んな本を食い漁っている私ですが、偏屈の食わず嫌いというか、すんごい人気作家を一冊も読んでない、はては映像化された作品(映画やドラマ)すら見ていないといったことがままあります。
 宮部みゆきもそのひとりでした。
 で、NOVA2に掲載されていた彼女の中編「聖痕」が初となりました。

<以下、ネタバレがあるので気を付けてください!>
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 作品は、こどもの身辺調査をする女性調査員とそこを尋ねてくる初老の男が発端となります。
 その男には昔、別れた妻との間に男の子がいました。
 離婚の原因は、女にはパチンコ依存などがあり、身持ちが悪かったせいでした。しかし、男の子は女に引き取られていきます。
 その子がどうなったか、気にしながらも、自身は再婚し、新たな生活を営みはじめる男。
 だがそこに、かつての妻とその内縁の夫が自分の子どもに殺されたことがニュースとなって入ってきました。
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 と、かなりハードな状況設定なのですが…

 家庭の中で行われる子どもが絡んだ犯罪…DV、ネグレクト、家庭内暴力、性的虐待って難しい。白黒はっきりつけにくい犯罪のなかでも、さらにこぐらがっている。
 なにが難しいと言っても、被害者である「子ども」はあまり声を上げない。
 どんなにロクデナシでも親は親で、情愛としての問題ではなく、生殺与奪の権を握った絶対者として彼らの上に君臨している。
 どんな形であれ彼らに反抗することは、自分の死刑執行所にサインをするに等しく、結果、彼らを救おうと外部から介入するものの助力(この場合、女調査員)を拒否する。
 家庭というのは閉じられた密閉空間で、それが、血縁に保障された健全な揺籃ではなく、かえって牢獄として機能したときの惨状といったら、もぉ・・・
 ヘタなホラー映画より100万倍怖い、といったら、わりにハードな家庭状況で育ってきたダンナいわく、ホラー映画とはそういう状況に置かれたこどものサバイバル劇としてみたらいいよ、とのアドバイスがかえってきました。
 あ、そっか。私の大嫌いなホラー映画には、そういう生きづらさを抱えた人たちのカタルシスの受け止め皿になってるんだね、と妙に納得したことがあります。
 
 幸いにして、私は安定した家庭環境に育ってきたのですが、不安定で身体的・言語的に暴力がある緊張した家庭環境にずっといると、おかしくなるだろうな、とは思います。
 そんななかで、「アナタのためを思ってなのよ!」とか価値観を押し付けられて日には、もぉ・・・
 たとえ、自分の本意でなくても呑みこまざるを得ず、そういうことを繰り返している間に自分の本音を見失うこともままあるだろうな、と…。
 
 そこには正義などなかった。あるのは事なかれ主義だけだった。血の絆や親子の情愛を妄信する性善説だけだった。
 邪悪が地上を闊歩していた。正義の価値は塵より軽かった。 


 どうにも自分が醒めすぎているのか、あるいは自分が子を持たないせいなのか、「親子神話」って絶対的で崩れにくく、あちこちに蔓延している気がします。
 声高に言うと変人扱いされるからあんま言わないけど。
 あ、もう遅いか。
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*「チヨ子」に収録

レビュー投稿日
2018年12月22日
読了日
2013年5月24日
本棚登録日
2018年12月22日
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