歪んだ創世記 (講談社ノベルス ツF- 1)

著者 :
  • 講談社 (1998年2月1日発売)
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本棚登録 : 157
感想 : 14
3

1998年、第6回メフィスト賞受賞作品。
実験的なメタ・ミステリー。

約20年ぶりに再読。20年前、積木鏡介作品は3作品刊行されていて、その3作を一度に買い、3作一気に読んで、しかしその作風が自分の好みに合わず、3冊とも読んだら処分する本のコーナーに置いてはみたものの、いざ処分しようとすると気が引けて、せめてもう一度再読してから処分しよう、と思ったまま、20年経ってしまいました。
なぜ、あの当時再読しようと思ったのか、と考えてみると、おそらく、一室で意識を取り戻した男が記憶を失っていて、というところから始まるこの作品が、もう一度読んだら夢野久作の『ドグラ・マグラ』のように読めるかもしれない、という理由かもしれません。
今回再読して、全然『ドグラ・マグラ』ではないし、記憶を失った男と女、というのは、『ドグラ・マグラ』よりもむしろ、宮部みゆきの『レベル7』の影響大かもしれません。

それでも、メタフィクションとしても、孤島を舞台にしたクローズド・サークルものミステリーのパロディ作としても、なかなか面白いこの作品。再読した価値はありました。
メタフィクションとしては、登場人物達が読者の存在に気づきこれ以上読まないでくれと頼む、とか、書き手が読者の思考を先取りし、読者は〇〇ページの文章を読み返すだろうなどと操られたり、となかなか楽しい。
パロディとしては、普通クローズド・サークルものでは、というか、ミステリー小説には暗黙の了解があって、こういう展開は掟破りだ、という展開が終盤に待っています。

こんなに個性的な作品であるにも関わらず、処分する本のコーナー行きになってしまったのは、登場人物に全く魅力がないからでしょう。
主要登場人物は、記憶を失った男女、それに書き手である人物の3人。この3人が、ほぼ記号のような存在で、まあ、それは作品の性質上、あえてそういう風にしているのかもしれないですが、読んでいて全く共感が出来ない存在です。
これが魅力的な登場人物であれば、書き手の思惑一つで、簡単に存在が消えてしまう儚い存在としての男女、あるいは、自らが作り出した世界では神のように全てを生み出せる存在、としての書き手に感情移入し、夢中で読めたかと思います。そして、この作品が文庫化もされない、ということもなかったのかな、とも思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年1月14日
読了日 : 2020年1月14日
本棚登録日 : 2020年1月14日

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