白痴 (新潮文庫)

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本棚登録 : 2623
レビュー : 269
著者 :
けんさん 日本文学   読み終わった 

これまで読んだどんな小説よりも、エロティックで背徳的。戦時下、常に死と隣り合わせの日常で、享楽を貪る男と女を描いた7編を収録。

その中からいくつかの感想。
「白痴」
空襲の最中、男と女が押入れで息を殺しておびえている状況が現実感を伴って空恐ろしい。がなりたてるラジオ、警戒警報のサイレン、高射砲の音、B29の通り過ぎる音。照空灯の真ん中にぽっかり浮かぶ機影、真っ赤に色ずく夜空……
畳み掛ける恐怖のイメージに鳥肌が立つ。戦争という言葉は、あまりに大きすぎて概念として捉えることしか難しいけれど、この物語はリアルに教えてくれる。

「戦争と一人の女」、「青鬼の褌を洗う女」
戦時下の日常において、自分の体をおもちゃにして遊ぶ女たちを描いた作品だ。
ただ、己の肉欲のために肉欲の塊と化した女の匂い立つようなエロス。
背徳的、官能的で、エロ小説以上にエロい。快楽のアリ地獄に落ちていきそうだ。苦しくて切なくて胸がふさがれそうな物語だ。

肉欲でつながった相手の喪失感は、時に心でつながっていた相手の時よりもダメージが大きいのは、それは一点の曇りもない純粋さがそうさせるのだろうか。人間の理智なんて肉欲の前では簡単にひざまずいてしまうのだろう。

レビュー投稿日
2013年3月16日
読了日
2010年9月19日
本棚登録日
2013年3月16日
3
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