夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

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本棚登録 : 2345
レビュー : 273
著者 :
けんさん 日本文学   読み終わった 

心の綾を丁寧に解きほぐすように、日常のちょっとした謎を解き明かす、女子大生の私と落語の真打である円紫さんコンビのやり取りが楽しい。軽妙洒脱で、落語のようだ。

北村薫を読むのは、この作品でまだ三作目だ。
『盤上の敵』から入ったので、あの作品の毒はむしろあの作品に必要であるとすんなりと受け入れることができた。しかし、このシリーズからの筋金入りの読者にしてみれば、なかなかに厳しいものだったことが想像できる。
つまり、この「円紫さんと私」シリーズはできる限りの毒を排した、とても優しい後味の本格ミステリ短編集なのだ。ところが、この作品はそうは言っても、前作の『空飛ぶ馬』よりも鋭い作品になっている。誰もが持っているはずの心の闇に光を照らし、できるかぎりの優しい語り口で、解き明かそうとしているのだ。

主人公である「私」と彼女の姉との姉妹の葛藤を描いた中編「夜の蝉」はなかでも特筆だと思う。男性作家なのに、細やかに姉妹の心情を描き出して、劇的な事件が起こるわけでもないのに、それは感動的なほどだった。

これだけの筆力がある作家なので、のちに直木賞を獲得するのは時間の問題だったのだろう。思わぬところで心を揺り動かされた本格ミステリだった。

レビュー投稿日
2015年12月24日
読了日
2015年12月24日
本棚登録日
2015年12月24日
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