どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

3.44
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本棚登録 : 15877
レビュー : 1440
著者 :
きのPさん 小説   読み終わった 

【感想】
「結局、どっちが犯人か分からずに終了する」。
そういったネタバレを知っていたために敬遠してしまっていた作品。
加賀恭一郎シリーズを全制覇したいという願望の元、面白いと信じてついに手に取りました。

結果、加賀恭一郎の勝利です!!
めちゃくちゃ面白かった!!
加賀恭一郎のポリシーなのか、ただ事件を解決するだけではなく、事件関係者たちとの血の通ったやり取りに「こだわり」を感じますね。
ホント、加賀恭一郎は、東野圭吾の数ある作品の中で一番魅力的なキャラクターだと思います。

結局どちらが犯人だったのか?
これを知りたくてすっと集中して読んでいたが、最後の最後まで分からなかったなぁ。
諸説ありますが、僕は2つのヒントから、犯人は「佃潤一」じゃないかな?と思いました。

ヒント1:犯人が「絶叫」して、犯人じゃない方は「悲鳴」をあげた。
⇒なんとなく、男性に「悲鳴」という表現は用いないかなと思った。
ヒント2:加賀の人間性から考えた、佃に対する「黙ってろ」という台詞。
⇒どんな状況でも、紳士の加賀が「ただの他人(≠犯人)」にそんな言葉を投げつけないのではないかと推察。

あと、加賀と康正の「刑事」と「被害者家族(且つ、リベンジャー)」という垣根を超えた友情も熱かった・・・・
色んな意味で中途半端に終わった小説なので、後日談があるなら是非読みたいなと思います。


全制覇に向けての最後の1冊として、次は同じく敬遠していた「私が彼を殺した」を読みたいと思います。


【あらすじ】
最愛の妹が偽装を施され殺害された。
愛知県警豊橋署に勤務する兄・和泉康正は独自の“現場検証”の結果、容疑者を二人に絞り込む。
一人は妹の親友。もう一人は、かつての恋人。
妹の復讐に燃え真犯人に肉迫する兄、その前に立ちはだかる練馬署の加賀刑事。

殺したのは男か?女か?究極の「推理」小説。


【引用】
1.「妹さんの部屋にお入りになって遺体を発見し、警察に通報した後は、部屋でじっとしていたというふうに聞いているのですが、その点に間違いはありませんか?」
こんなふうに尋ねてくる加賀の目を、康正は警戒心を持って見返した。口調はごく事務的なものであったが、そういう時こそ刑事はわなを仕掛けるものだということを彼は知っている。

2.他殺だとわかった瞬間、康正は自らの手で犯人を突き止めることを決心した。
世の中には自分の手ですべきことと、そうでないことがあるが、これは決して他人の手に委ねるべき事柄ではないと彼は思った。
妹の幸せを奪われた無念さは、犯人が逮捕される程度のことではおさまらない。

肝心なことは、警察に気づかれないことだ。
警察が園子の自殺に少しでも疑いを挟むようなことがあれば、康正は全力を傾けて、それを打ち消していくつもりだった。

3.加賀は役者のようにお手上げのポーズを作り、またしばらく歩き回った。
「和泉さん」足を止めた。「犯人を見つけ出すのは警察に、裁くのは法廷に委ねてください」
「うちの父の口癖を教えてあげましょう。無意味な復讐は赤穂浪士だけでたくさんだ、というものです」

4.「一杯どうですか?」加賀がコップを持つ手の形を作った。「安い焼鳥屋があるんですが」
康正は相手の顔を見た。その表情には、下心めいたものは感じられなかった。
酒を飲みながら情報を引き出せるかも、という考えが康正に浮かんだ。そしてそれ以上に、この男と飲むのも悪くないと思った。
「奢りますよ」
「いや、割り勘でいこう」と康正は言った。

5.「ならば佃はどうですか?佃はもう容疑者ではないんですか?」
「僕だって殺していません」佃が唇を尖らせた。
「黙ってろ」加賀が一蹴した。「俺は今、和泉さんと話をしているんだ」

6.「スイッチは元々繋がっていない」
康正はぶっきらぼうに答えると、ゆっくり腰を上げた。
スイッチの内部をつないでおかなかったのは・・・
君ともう一度飲みたかったからだといったら、この男はどんな顔をするだろうかと康正は考えた。



【メモ】
p71
上司に対して康正は、自殺に間違いないと答えた。しかし本音は全く正反対だった。
現在の康正は自殺でないことを確信していた。


p84
残りのワインは流しに捨てたのだろうと言いかけて、康正は思いとどまった。これまでのやり取りから、この刑事を舐めてはいけないという結論を出していた。


p89
「妹さんの部屋にお入りになって遺体を発見し、警察に通報した後は、部屋でじっとしていたというふうに聞いているのですが、その点に間違いはありませんか?」
こんなふうに尋ねてくる加賀の目を、康正は警戒心を持って見返した。口調はごく事務的なものであったが、そういう時こそ刑事はわなを仕掛けるものだということを彼は知っている。


p96
他殺だとわかった瞬間、康正は自らの手で犯人を突き止めることを決心した。世の中には自分の手ですべきことと、そうでないことがあるが、これは決して他人の手に委ねるべき事柄ではないと彼は思った。
妹の幸せを奪われた無念さは、犯人が逮捕される程度のことではおさまらない。

肝心なことは、警察に気づかれないことだ。
警察が園子の自殺に少しでも疑いを挟むようなことがあれば、康正は全力を傾けて、それを打ち消していくつもりだった。


p173
そうした三角関係にあったからといって、弓場佳世子もしくは佃潤一が、園子を殺す必要があるだろうか?
もっとも・・・男女の愛憎のもつれというのは、なかなか杓子定規には行かないというのも事実だ。三者の間には、複雑な情念のもつれがあったのかもしれない。


p194
「どうして警察に言わないんですか」
「俺の目的は」そういって康正は佳世子を凝視し、次に作り笑いをした。「犯人を捕まえることじゃない」


p204
「なぜ私が隠し事をしなければならないのかな?」
「その理由についても、大体見当がついています」

「最初に感じた疑問は、ごく些細なことでした。死亡推定時刻から考えても、園子さんが流し台を使ったのは、数十時間前のはず。とうに乾いていなければおかしい」
「次に気になったのは、空のワインボトルです。容量の大きさから、一人で空けるには瓶が大き過ぎる。
(中略)
ところがこのワイングラスは、よく見ると変なところがあるのです。園子さんは綺麗好きらしく、どのグラスも見事に磨き上げられています。しかしこのワイングラスだけ、ずいぶんと曇っていたんです。洗い方が雑だともいえます」


p209
「あと一つ考えられることは」加賀は真顔になっていった。「あなたには犯人を庇う気はないが、犯人が警察に逮捕されることは望んでいない、ということです」

(中略)

加賀は役者のようにお手上げのポーズを作り、またしばらく歩き回った。
「和泉さん」足を止めた。「犯人を見つけ出すのは警察に、裁くのは法廷に委ねてください」
「うちの父の口癖を教えてあげましょう。無意味な復讐は赤穂浪士だけでたくさんだ、というものです」


p259
「一杯どうですか?」加賀がコップを持つ手の形を作った。「安い焼鳥屋があるんですが」
康正は相手の顔を見た。その表情には、下心めいたものは感じられなかった。
酒を飲みながら情報を引き出せるかも、という考えが康正に浮かんだ。そしてそれ以上に、この男と飲むのも悪くないと思った。
「奢りますよ」
「いや、割り勘でいこう」と康正は言った。


p267
「和泉さん、あなたは凄い人だ。あなたの咄嗟の判断力、推理力、それから覚悟と執念には心から敬服します」
「急にどうした」
「あなたのその能力が、真実を突き止めることに費やされることに対しては何も言いません。だけど、復讐に使われるべきではない」
「その話はしたくないな」康正はグラスをテーブルに、音を立てて置いた。
「重要なことです。あなたは感情に流されて、自分を見失うような人じゃないはずだ」

(中略)

「亡くなった会社員の遺族のほうから抗議の声があったそうですね。警察は暴走族の肩を持つのかと。それらの声に対してあなたはこう言った。自分たちの仕事は誰を罰するかを決めるのではなく、何故そんな悲劇が起こったのかを調べることだ、と」
「この話の中にこそ、あなたの姿がある。交通事故でも殺人事件でも、本質は変わらないはずです。犯人を憎むなとは言いません。時にはそれが活力になることは自分も知っています。だけどその活力は、真相究明に注がれるべきです」


p330
加賀は口の中で、その言葉を何度か繰り返したようだ。やがて勘の鋭い刑事は、ここでもその明敏さを発揮した。
「OL殺しか」
「そういうことだ」康正は頷いた。
「この管内で起きている、連続OL殺しだ。あの犯人のやり口が、土足で上がり込み、眠っている女性を暴行した後、紐で首を絞めて殺すというものだった。弓場はあのやり口を真似ることで、園子も同じ犯人に殺されたと見せかけることを考えたわけだ」

(中略)

やがて佳世子が顔を上げた。
「違うんです。でもやっぱり違うんです」
「あなたのおっしゃる通り、あの夜私はここへ来ました。OLが襲われる事件が続いていたので、それに見せかけるつもりだったというのも、その通りです。あの時はどうかしていたと自分でも思います」


p339
「ならば佃はどうですか?佃はもう容疑者ではないんですか?」
「僕だって殺していません」佃が唇を尖らせた。
「黙ってろ」加賀が一蹴した。「俺は今、和泉さんと話をしているんだ」


p355
「スイッチは元々繋がっていない」
康正はぶっきらぼうに答えると、ゆっくり腰を上げた。
スイッチの内部をつないでおかなかったのは・・・
君ともう一度飲みたかったからだといったら、この男はどんな顔をするだろうかと康正は考えた。

レビュー投稿日
2019年8月28日
読了日
2019年8月28日
本棚登録日
2019年8月28日
9
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