新世界より(上) (講談社文庫)

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本棚登録 : 10219
レビュー : 872
著者 :
きのPさん 小説   読み終わった 

【感想】
面白い小説を探すにあたり、人に聞いてもネットで検索しても、必ず一度は耳にする「新世界より」。
上中下3巻という中々のボリュームでしたが、どのような内容か一切わからないままチャレンジしました。

本作品を一言で表すならば、「和製ハリーポッター」という感じでしょうか。構成のクセがスゴイ!!
サイコキネシスを操る人類と、その文明の中に存在する色々な変わった生物たち。
やはり世界観についての説明はMUSTで、やや蛇足多め、ファンタジーを文章化するとこうなるのかといった感想。
正直上巻の最初の方では、本作品のファンタジーに満ちた世界観を理解するのに骨が折れました・・・・・
言い換えれば、この本の構想はそれほど奥が深く、作者への畏敬の念を感じざるを得ませんでしたね。

さて、上記の通り、世界観を理解したり読み進めるの難儀はしたものの、物語序盤から読者の関心を惹きつけて離さないオーラが本書にはあります。
最初の最初である上巻9ページ目で、
「多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。」
「この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。」
こんな記述があったのだから、一体なにがあったの?!って気になって仕方がない(笑)

上巻の途中までは、本当に「和製ハリーポッター」で、主人公の早季たちの成長の過程が全人学級の授業を通して緩やかに描かれていくだけなのだが、野外学習で「ミノシロモドキ」に出会ってから展開は一変する。
この世界が、如何にして現代を迎えたのか。
「ミノシロモドキ」を介して「旧世界から」の通達、知ってはいけない過去を早季たちは受けてしまう。

知ってはならない「パンドラの箱」を開けてしまった早季たちの運命は?
とまぁ、こんな具合で上巻は幕を閉じる。

個人的に、ミノシロモドキが言っていた内容の中でも特に、「混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」の伏線が気になりますね。
「科学文明の継承者たち」は、一体なにをしたのでしょう?そうやって歴史は大きく動いたのか?
あと、全体を通して、「もし〇〇だったなら、結果的に〇〇にならなかったのに・・・」や、「この時は、〇〇のようなことを想像もしていなかった」など、期待を煽る記述が多すぎるのも気になったが、結果的に面白いのだから良しとしよう。

中巻、下巻の続きがとても気になります。


【あらすじ】
ここは汚れなき理想郷のはずだった。
1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!

子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!


【引用】
1.多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。

2.「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」

3.「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。
日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。
重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。
この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです。

「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」



【メモ】
p9
多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。
この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再認識させられたのは、人間というのはどれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎた途端に忘れてしまう生き物であるということだ。


p14
初めてこの話を聞いたときには、私は自分が間接的に親友の命を救ったことに大きな喜びを覚えたものだが、今はその事を思い出すたびに複雑な思いにかられる。
もし、真里亜がこの世に生まれてこなかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから…


p17
「早季は、面従腹背って言葉を知っているか?表面は従っているが、腹のなかでは違う事を考えているっていう事だよ」


p230
わたしたち五人は、魅入られたようにミノシロモドキの語る長い話に聞き入っていた。話の内容は1%も理解できなかったが、わたしたちの耳から脳に流入した言葉は、乾いた地面を潤す雨水のようにスムーズに吸収されていった。
それまでのわたしたちの世界に関する知識は、最も重要なピースが欠けているジクソーパズルのようなものだった。
だが、ミノシロモドキの言葉によって欠落を埋め好奇心の渇きを癒してくれるものの、それにより浮かび上がってくるのは、身の毛もよだつような地獄絵図であることは、想像もしていなかった。


p244
わたしは身震いした。わたし自身、呪力を使うのによく似たイメージを用いたことがあり、闇を飛翔する巨大な猛禽の姿が、はっきりと脳裏に浮かんだのだ。
「・・・王朝末期になると、王を後継者が殺害して王位を簒奪するのが通例になりました。後継者が思春期になり、PKが発動した瞬間から、先王の命は風前の灯火となったのです。そのため、王子たちは常に厳しく監視され、叛心(はんしん)ありと見なされれば、先手を打って殺害されたり、両目を潰されて地下牢に幽閉されたりということも、日常茶飯事でした。。。。」


p246
「僕らの社会は、どうやって生まれたんだ?知りたいのは、それだけだ」
「五百年間の暗黒時代は、奴隷王朝の終焉によって幕が引かれました。日本列島を支配していたすべての王朝は、世代間の厳しい淘汰によって、ついにPK能力者の血統が絶えてしまったのです。重しの取れた国々は、わずか数十年の戦乱により、過去五百年の間にPKによって虐殺された死者をはるかに超える犠牲が生じました。この混乱を収拾するために、それまでは歴史の傍観者に徹してきた科学文明の継承者たちが、ついに立ち上がったのです」

「その後、現在に至る歴史について、信頼の置ける文献はきわめて少数です。そのため、残念ながら、ご質問の点に関しては不明です」


p465
「一番、人間に忠実だからこそ、注意が肝要なんだよ」
覚は、大儀そうに眉をしかめた。
「なぁ。昨日から僕らは、生きるか死ぬかという場面が続いてきただろう?だけど、賭けてもいいよ。今現在が、多分、これまでで一番危険な状態だ」

レビュー投稿日
2019年10月15日
読了日
2019年10月15日
本棚登録日
2019年10月15日
10
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