大日本史 (文春新書)

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kinya3898さん  未設定  読み終わった 

歴史は勝者によって作られる。ただ、後世の我々は残された史料を、角度を変えて読み解くことにより、必ずしも「勝者の歴史」通りではないストーリーを発見することができる。

これは本書で語られている一節。まさにその通りで、例えば幕末史。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」「燃えよ剣」は今や幕末の定説感さえ漂わしている。膨大な資料を渉猟し、書かれたとはいえ、あくまでも幕末を舞台にした「小説」。ゆえに、著書の主人公に対する肩入れから来る「作り事」も多く含まれている。黒船来航から明治維新までを概観する上においては格好の書ではあるけど、倒幕派=義 佐幕派=不義 という単純な見方で眺めるのはあまりにも短絡的過ぎる。「フィクション(小説)は、歴史の真実を錯覚させるという点で怖いものがある」と著者のひとりの山内氏が嘆息するのも頷ける。

【興味深かったトピック】
◉水戸学は徳川家生き残りの為の保険⁈
幕末の尊王思想の拠り所であり、理論武装の供給源であった水戸学。極端な尊王主義を打ち出すことで、何があろうとも徳川家は必ず生き残る。水戸藩自体は安政の大獄でボロボロになってしまうが、もし水戸藩がなければ徳川御三家はもっと酷い目に合う可能性はあった。王道(天皇)と覇道(徳川家)の緩衝材であり平衡装置でもあった。

◉征韓論の対立軸とは?
明治初期は税収政策が確立しておらず政府の金庫は火の車。多大な予算を必要とする西郷率いる外征派vs財政基盤の確立を目指す大久保率いる富国派。「富国強兵」と四字熟語として捉えがちだが、富国してこその強兵の大久保と同時に行えると鼻息荒い西郷のガチンコであった。

◉日本陸軍の誤謬
陸軍はドイツの参謀本部に学んだことで、ガバナンスが狂い出す。参謀本部は、そもそも企画立案をするだけのスタッフ部門。決定・命令を司る司令部ではない。ところが、昭和の日本陸軍は参謀本部が全てを決めてしまった。ゆえに、陸軍は参謀本部と戦線との乖離が生じ、暴走を始める。

◉小説「落日燃ゆ」の主人公 広田弘毅は凡愚だった
城山三郎の描いた平和協調に腐心した広田弘毅。その実はとんでもない外相であった。長引く中国との戦争の和平工作を断固反対したのが外務大臣広田弘毅だったとは…。

◉エネルギー面から見れば、戦争なんてできるはずもなく…
1940年時点で日本の石油輸入依存度は92%。その内81%はアメリカから。これだけとっても絶対にアメリカとは戦争できなかった。にもかかわらず戦争へと舵を切った。

「へぇ〜、そうなんだ」「そういう見方があるんだ」という新しい知識と見識を得た読書タイムであった。天皇・土地・宗教・軍事・地域・女性・経済。この7つのツボを押さえることで歴史を理解できると語るは、歴史学者 本郷和人氏。その説に倣えば、本書には女性こそ登場しないが、その他は確かに網羅されている。

黒船来航から戦後まで150年を「世界の中の日本の近現代史」と位置付けで知ることができた白熱の書でありました。

レビュー投稿日
2019年6月21日
読了日
2019年6月21日
本棚登録日
2019年6月21日
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