深夜から明け方までが営業時間の「めしや」。メニューは豚汁定食以外にはなく、あとは、食べたいものをいってくれりゃ出来るものならつくるよ、というスタイルのお店。訪れる様々なお客さんたちを毎回の主人公とする、ちょっとした人情ものです。といっても単なる人情ものと片付けられないこの魅力、とにかく出てくる食べ物のおいしそうなこと!タコさんウインナ、ナポリタンなどの懐かしいものから、オニオンリング、焼きナス、冷ややっこ・・・。ショージ先生のエッセイと同じくらいに、空腹時に読むの厳禁なマンガです。

2010年5月8日

読書状況 読み終わった [2010年5月8日]

新興宗教による小学生の集団誘拐事件が起こる。それを追う事件記者モリーが主人公の物語ですが、なんといっても素晴らしいのは子供たちと一緒に誘拐されてしまったスクールバスの運転手でありベトナム帰還兵であるウォルター・デミングというキャラクター。閉じ込められた暗い穴のなか、彼は子供たちを励ますために自作の物語を語るのですが、その物語が何をベースとしてものなのかがわかる場面では涙が止まらなくなります。そして、ベトナムの戦地、閉じ込められた暗い穴のなかで、疲弊した兵や子供たちを元気づけたのはカート・ヴォネガットの『タイタンの妖女』の一節「タイタンの大気は、地球の春の朝にパン屋の裏口外でかぐ空気とよく似ている」。わかるような気がします。

2010年5月8日

読書状況 読み終わった [2010年5月8日]

マルコはパリの三ツ星レストランの看板料理に使われている日本産キノコ。そのお店のキノコ管理担当者である一馬。オーナーから日本でのマルコの仕入れを任されたことから、一馬はマルコの秘密そして家族の秘密を知ることになるのです。栗田由起さんはいつもどこか不思議な物語を紡ぐ方ですが、いちばんヘンなのがこのお話。思いもよらぬラストに、キツネにつままれたような気分になります。

2010年5月8日

読書状況 読み終わった [2010年5月8日]

幼いころ、だれもがもっていた空想の「ひみつのおともだち」。主人公のおんなのこにとってそれは「モーラ」。
ある日突然あらわれて、ミルクやポテトスープ、バナナをたべてぐんぐん大きくなる。大すきなバナナを食べているときの絵のかわいいこと。おんなのこは、成長するにつれだんだんとモーラとは遊ばなくなっていく。それでもモーラはどこかに必ずいる。いつまでもいつまでも大切な本当のおともだち。

発酵大王、小泉武夫先生の酒肴エッセイ。おもしろくないはずがありません。
酒の歴史、奇酒珍酒の紹介から、これは!というお勧め酒の肴まで。いっぱいやりたくなること請け合いの一冊。とくに最終話「とっておきの肴」を読むと、お酒の飲める体質であったことを思わずよろこびたくなる。

読んだ感想。それは、ひたすら「スノッブだな〜」。
寿司、魚、鍋、雑炊、お茶漬けなどについて魯山人が語っておりますが、ちょっとやりすぎ感が強くて、私には合わないみたいです。

昔から「オシャレ」と「女心」を一貫して書き続けてきた西村しのぶさん。
『デジタル・フラワーズ』の主人公の恋人はお料理上手で、彼女は彼のことを、おいしいごはんを作って食べさせてくれるなんて、こんな泣かせる男はいない、と思っている。『VOICE』の主人公は、初恋のひととのランチをきっかけに、固い勤めを辞め、婚約を破棄し、シェフになる道を目指す。この短編集に出てくる主人公の女性たちは、みな、格好良かったり、オシャレだったり、でも、それでいて純情一途なひとばかりで、とってもかわいらしい。

クジラ解体工場で働くに二匹のアシカ、「煙草」と「コーヒー」を中心としたロック、アメリカ文学、アメリカ映画のテイストあふれるショート・ストーリー。
フロリダでワッフル・スタンドを開くのが夢のアシカは
ビールのコマーシャルみたいな生活をするの、と話し、
中国から来たアシカは、自分が故郷に置いてきてしまった犬の顛末を知る。
ウサギと恋におちたアシカは、どこまでもどこまでも逃避行を続けるのだ。

ふたりぐらしの仲良し親子、作家のお母さんと9才のさきちゃん。北村薫さんらしい優しい筆致で描かれる12の物語。ちょっとせつないお話もあり、特に『猫が飼いたい』では心がきゅっときます。
『さばのみそ煮』では、ごはんを作りながらお母さんの歌う適当な替え歌が秀逸。
「月のー砂漠をさばーさばとーさーばのーみそ煮がゆーきました」
これを「かわいい!」と言えるさきちゃんの心のすこやかさ。

ご存じ、ベーカー街の探偵、シャーロック・ホームズが主人公の短編集。
収録の『青いガーネット』では、ある男が奥さんとの仲直りの手段として手に入れたクリスマスの七面鳥が事件の大きなカギを握っています。
ひとむかし前のイギリスの家庭においてはクリスマスの七面鳥は重要アイテムだったのですね。
七面鳥の丸焼きって食べたことありますか?

まさに、いのちの食卓というタイトルどおりの本。
口に入れる食物を吟味すること、丁寧に料理すること、の大切さをかみしめさせられるような内容。
背筋の伸びるような言葉に、普段、適当に食事をしてしまうこともある自分を少し恥じてしまう。
辰巳先生といえば、スープの本が有名ですが、この本でも、玄米のスープ、クレソンのポタージュなどのレシピが紹介されています。

短編の名手ジュンパ・ラヒリのデビュー作。静謐ながらもドラマチック、食べること、と密接に描かれる日常がリアル。
移民系作家の書く作品は、興味をそそられるような食事の描写が多い。なかでもこの作品は、インド系の彼女がその祖国の料理をふんだんに登場させている。

雪沼という田舎町で暮らす人々とその仕事を描く連作集。
どの話を読んでも,真面目に仕事をすること,真摯であることの素晴らしさに自分もこうありたい,と思わせられる。
私は断然,レコード店を描いた「レンガを積む」が好きで,
音楽をきくひとならピンとくるタイトルだと思う。
ま,レンガときたらスピーカーなわけです。
それはさておき,食について描くのはお手の物の堀江敏幸さん,この連作集収録の「イラクサの庭」では,なんとイラクサのスープなる料理を登場させています。
決して「おいしい」という描写はされていないのに,何だか,食べてみたい。

故ヒース・レジャー出演の超名作映画の原作小説。
カウボーイ同士の許されぬ恋を描く。
互いに家族をもちながらも,押さえきれない心が切ない。
「オレはお前を見失っちゃいけなかったんだ」と気づいたときはもう遅かったのだから。
山で羊番をしながらの二人の食事は,シチュー,石みたいに堅いスコーン,豆の缶詰。それでも,二人にとっては,天国の食卓。

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