書記バートルビー/漂流船 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2015年9月20日発売)
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感想 : 8
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『書記バートルビー』
バートルビーという男はいったい何を表しているのだろう?と思考がさまざまに巡る読書だった。
労基法的なものを厳守し給料内の職務のみを愚直なまでに敢行しているのか、資本主義社会や労働のありようといった『常識』とされているものに異議を唱えているのか、心疾患なのか、障害者雇用もしくは引きこもり無職の風刺なのか……と考えているうちに、ラストで『デッド・レターズ(配達不能郵便物)』と一応の解が示される。最後の最後にますますアレゴリー色が濃厚になる上、巻末の解説を見ても腑に落ちるような回答は得られずにいるが、とりあえず彼はデッド・レターズなのだ。
バートルビーは主人公の在所宛に「人に伝える使命を抱きながら」送られてきた手紙であるが、正しく開封されることはなく、配達不能郵便物として「墓場」へ捨てられる。主人公がこの手紙を受け取らなかったのは別人向けの宛名など宛先不明であったからか、すでに救われない状態であったからか。
キャラクターとしてはニッパーズがおもしろかった。

『漂流船』
黒人は奴隷として黒人・白人双方で売買され、白人水夫や白人の奴隷所有者は当時の社会で常識とされている職務を行なっている。
デラーノは黒人を当たり前のように劣った存在と見做し、犬と同列に好感を抱いている。この価値観は現代の我々が何らかに対して有している「常識」と当たらずといえども遠からずなのではないだろうか。50年、100年後の人間の目には、現在の我々の常識もこのように映るのだろうと思うと、本書で描かれる彼らの様子を過去のものと安心することは難しい。

冗長な一人称小説は好みではないのだが、スペイン人船長がなかなか握手を離さないかと思えばボートに飛び降り、それに白人水夫が続くシーンのスピード感はよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月15日
読了日 : 2018年10月15日
本棚登録日 : 2018年10月15日

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