サッカーのない人生なんて! (ベースボール・マガジン社新書 11)

著者 :
  • ベースボール・マガジン社 (2008年5月1日発売)
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感想 : 10

本書が出版されたのは2008年、Jリーグ開幕15周年の年です。1993年Jリーグ開幕当時、サッカーに関わるたくさんの新たな職業が生まれました。審判、代理人、トレーナー、FIFA理事…そして当然ながらJリーガー。
サッカーを職業にするという日本で初めての試み、思考錯誤を繰り返しながらこの15年を歩んできた彼らのエピソードが11の章で語られます。この中には日本サッカー協会最高顧問川渕三郎や澤選手など著名人も含まれています。
全体的にサッカーに関する職業の裏話がたくさん語られているので、サッカー好きなら楽しめるはず。特に日本代表エキップメントの麻生さんのエピソードが面白かったです。エキップメントとは選手のユニフォームやスパイクなどの備品を管理する人のこと。静まり返ったロッカールームに整然と選手一人一人に合わせたユニフォームとスパイクを並べるために、彼がどれだけ最新の注意を払っているか。日本全国に点在するコインランドリーの位置を日本で一番良く知っているのは彼だ、という冒頭のエピソードからも、その苦労が伺い知れます。
また、国立競技場施設管理課の鈴木さんのエピソードでは、芝生との格闘の歴史が語られます。「緑の悪魔」とも揶揄される芝は、四季に梅雨と5つのシーズンがある日本では管理が非常に困難なものでした。考え抜かれた方法は、リーグが始まる数年前から夏芝、冬柴両方の種を巻き土壌を改良するという二毛作。気の遠くなる様な緻密な作業です。
Jリーグが残した大きな功績の1つとして、「1年を通じて芝が青く、さらにサッカーやラグビーといった冬場のスポーツでの酷使にも耐えられることを常識にした」ことがあげられていました。

Jリーグが誕生してから今年で20年。私たちが今当たり前のように見ている週末の試合は、決して当たり前では無く、たくさんの人の努力や挫折の歴史の上に築かれたものだと再認識させられました。地元のチームを応援できるということは幸せだなあと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年3月20日
読了日 : 2013年2月24日
本棚登録日 : 2013年3月20日

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