幼なごころ (岩波文庫 赤 N 505-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003750513

感想・レビュー・書評

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  • フランスの作家、ラルボーの短編集ですね。
    十話の作品が紹介されています。
    いずれも主人公は少年少女です。
    ラルボーは子供たちの目を通して、大人社会や世の中の仕組み、伝統的な信仰、物語や詩などを問いかけているようです。人間にとってよりよいものは何かと。
    ラルボーはそうした作風から作家に愛される作家だったそうです。
    解説の堀江敏幸さんは語っています。「若いころの私が惹かれたのは、おそらくこの『深くはない」、もっと自在ななにかを求めるために、夏休みの宿題を雑文の注文に似た強制と受けとるような反抗心とストイシズムだったのだろう。しかもそれが、子どもたちを主人公にした小説集のなかに、ひっそりとではなく、堂々と組み込まれているのだ。」
    ラルボーは軽い小説家を目指したそうですが、軽さのユマニスムの中に作家たちは魅力を感じたのではないでしょうか。
    さまざまなテーマをまるで謎かけのように少年少女たちを通して語りかける物語ですね。

  • すっごいフランスっぽいなあ、と思って。「フランスさ」って何なのかと、また考える。

    「モーンパリー!」と昔再放送で見た映画のイメージがよぎる。ちょいと検索。コメディだった。映像パッケージのカトリーヌ・ドヌーブの青いセーターのおしゃれなことよ。

    これを日本人がカツラ被って同じセーター着てもただの真似で終わり、フランスらしさの欠片も醸し出せないわけでして、確実に絶対に「フランスらしさ」は存在する。その正体はと言うと、街と文化を愛し誇りを持ってることだと思うな。なんだまた本の内容に触れないまま終わるぞ。

  • 寡聞にして知らなかったが、ラルボーはジッドやプルーストにも絶賛されていた「作家に愛された作家」らしい。ただ本人が大作家となることを望まず、「小さな作家」でいることにこだわったのだとか。なるほど。
    タイトル通り、少年少女たちを主役に据えた作品ばかりを収めた短編集。と言っても純粋無垢な美化された「子供」ではなく、幼さゆえの残酷さや狡さもきちんと描かれている。まあ「少女」については「少年」に比べて美化されている部分もあるが、それは致し方ないかな。
    また、どの作品も明るめの色調ではあるが、読後の印象は微かに苦い。その辺りがリアルで、読んでいるうちに、子供の頃の感覚が呼び起こされた。退屈な授業が始まる前の憂鬱、「見えない友達」、残酷な意地悪、庭に作った自分の「王国」――。きらきらと眩さに溢れているものの、その季節が過ぎ去った後間もなく大人となる予兆も秘めていて、どこか切なく映る。
    好きな作品は「ローズ・ルルダン」「包丁」「偉大な時代」「十四歳のエリアーヌの肖像」。
    特に「包丁」は代表作だと言われるだけあるなと思う。この作品にプルーストが衝撃を受けた、ということを事前に耳にしていたので、どんなに激しい展開になるのだろうと緊張しながら読み進めた。そのため目立った大きな波乱のないまま迎えた結末には、最初は少し拍子抜け。でも読後じわじわと余韻が広がっていって、気付けば強い印象を残していた。
    仮にミルーが一途に想いを抱き続けたとしても、彼の身分から、恋の行方は最初から分かっている。だけど大人になった彼の指に、傷跡が微かにでも残っているといいなと思う。結婚指輪を填めたその下に幼い恋の跡があるなんて、何とも象徴的でいいじゃないか。見るたびに、かつて避暑地で出会った「身分違い」の少女達の姿を思い出してくれるといいな。

  • 1169夜

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著者プロフィール

(Valery Larbaud 1881–1952)
フランスの小説家・詩人・批評家・翻訳家。フランス中部ヴィシーに生まれる。幼年期より外国各地を旅した経験を基にした、コスモポリタンの青年バルナブースを主人公とする『裕福なアマチュアの詩』で作家デビュー。この作品を改作した『A・O・バルナブース全集』が代表作となる。少年少女の独自の内面を鮮やかに描き出す小説、「内的独白」を用いた心理小説を多く発表。創作活動に加え、該博な知識と豊かな語学力を駆使した国内外の作家や作品についての批評活動、ジョイス、バトラーの作品をはじめとした翻訳活動を精力的に行なった。

「2022年 『聖ヒエロニュムスの加護のもとに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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