アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 (集英社文庫)

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  • 集英社 (2014年9月19日発売)
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 冒険家であり、ノンフィクション作家の角幡唯介さんが1845年ヨーロッパとアジアを結ぶ航路を発見するためイギリスを出発し、総勢129名が全滅するに到ったフランクリン隊の足跡を辿るため、北極冒険家の荻田泰永さんと共に3ヶ月に渡って北極を旅する探検記。

 始めはそら大昔に北極旅するんやから全滅することもあるやろう、と思っておったのですが、少なくともフランクリン隊が出発した1845年当時は18世紀の劣悪な条件のもとでの探検ならいざ知らず数十人単位で死亡したりすることはなかったらしい。船は当時の最先端技術を詰め込んだ立派なもので、5年分の食料を備え、図書室や温水暖房まであったらしい。何か思ってたのとだいぶ違う感じ。しかも、隊を率いるフランクリンはかつての北極探検で極限の飢餓に襲われながらも“革靴”を食べて生き延びたといわれる北極探検界のスター、これが何で全滅したん???2人の旅と交互にちょっとずつ明かされるフランクリン隊の話がミステリを読んでいるみたいにドキドキして面白かった。

 そんな絢爛豪華なフランクリン隊とは対照的に2人の旅は重さ100キロの橇を飢えに悩まされながら延々引きながら歩く、というかなりストイックなもの。一日に5000キロカロリー摂っても食べた瞬間にお腹がすくらしく、飢えに苦しんだ2人が麝香牛を射殺して食べるところは圧巻やった。

 そして苦労の末、ジョアヘブンの村へ着き、氷の上を歩く旅は終わるんやけど、さらにその先フランクリン隊の生き残り「アグルーカ」と呼ばれた男が旅したかもしれない南へ再び出発。ここから先は詳細な地図もなく、ただ河をボートで渡れる場所を探してツンドラの湿地帯を歩くのみ。ただただ氷と飢えに格闘していたそれまでとは違い、湖で魚を釣ったり旅に彩りがでてきて面白かった。

 角幡さんのこの本も面白いけど、クレイジージャーニーという番組に出演された旅の相棒である荻田さん、「コラ〜ッッア」と叫びながら熊を撃退したり、ボコボコの氷の上で橇を引く様子なんかが映像で観れてまた違う面白さがあった。つぎは荻田さんの「北極男」を読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年2月11日
読了日 : 2015年12月11日
本棚登録日 : 2016年1月3日

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