橋川文三は戦前の超国家主義の本質を「縦軸の無限性」やその磁場である天皇制にみていない。推測だが、橋川にとって「縦軸の無限性」等は超国家主義にとってあくまでひとつのツール、もしくは超国家主義を成り立たせるための建前にすぎない。
橋川が強調する超国家主義の本質は、国家主義を超えようとする人々の心性だ。テロを起こす朝日や井上らが持つ内面や革命性が、明治期のテロと比較して明かされる。源流は「坂の上」を登りきった場所に存在した、ニヒリズムや戊申詔書だと言えるだろう。
橋川は戦時中の学生時代に、小林秀雄や保田与重郎から影響を受けたようだ。彼らから、浪漫主義的な「近代の超克」への志向を感じることはあっても、「縦軸の無限性」を感じることは少なかっただろう。だから実感として超国家主義の超国家性が明瞭に見えている。
それらが、戦前派ながら徴兵により軍隊生活を身を以て経験した丸山真男との決定的な差異なのかもしれない。
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- 感想投稿日 : 2017年5月29日
- 読了日 : 2017年5月29日
- 本棚登録日 : 2017年5月27日
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