「一匹と九十九匹と」を、同年発表の丸山眞男「超国家主義の論理と心理」と比べると実に面白い。丸山が旧時代の価値の陳腐さを暴露し、新たな価値を時代に刻み込もうとしているのに対し、福田は新たな価値が敷かれた時代においても旧時代と同じく99匹に対する1匹が存在せざるを得ないことを指摘する。
どのような社会においても政治が救えない1匹はいる。常にこの考え方が根底にあるから、戦前と戦後で声高に叫ばれたそれぞれの近代的諸価値を無条件に信じていない。では何に軸足を置くのか。それは古典や歴史の積み重ねであることが、以降の論述で繰り返し述べられる。旧仮名遣いにこだわる理由も開陳され、思想のみならずライフスタイルも含めて徹底的な保守派であることがわかる。
同時代的なトピックに触れた論述が多いものの、福田の反応は流行り廃りのないスタイルとなっており今後も長く読まれることだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年1月29日
- 読了日 : 2017年1月29日
- 本棚登録日 : 2017年1月29日
みんなの感想をみる