世界からひとつひとつ 何かが消滅していく物語
「消滅」が起きる朝には空気がいつもと違っている。
何が消滅したのかすぐに気づくこともあれば、
その日生活をしながら気づくこともある。
大半の人にとってその儀式は当たり前のことで
嘆いたり悲しんだりする対象のものではない
そのうち消滅したことすら忘れて
心の中の空っぽは増えるけど
日常はちゃんといつも通り続いていく。
一部の「消滅」の影響を受けない人たちは
秘密警察による「記憶狩り」を恐れながら
周りの人と同化するよう息をひそめて暮している。
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何かが消えたとき
それに気づくほうが幸せだろうか?
気づかないほうが幸せだろうか?
私はこの物語を読み終わったとき、悲しかった。
とても静かで寂しくて、でもどこか美しい悲しさを感じた。
消えてしまったことを覚えているから、悲しみを感じられるのだ。
そしてこの本そのものが「密やかな結晶」なのだと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学(女性著者)
- 感想投稿日 : 2020年12月13日
- 読了日 : 2020年12月12日
- 本棚登録日 : 2020年12月12日
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